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help リーダーに追加 RSS On Boxing@PC #023

<<   作成日時 : 2008/05/11 02:10   >>

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おおひなた れいの《On Boxing@PC》
――モニタの片隅からセカイを覗く――

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#023 3/14 バイエルン(ドイツ)興行より 後編


 みなさんこんにちは。

 今回は、前回紹介したバイエル戦のアンダーカードで、すでにこの連載でもお馴染みの亡命キューバ人ヘビー級ホープが登場した試合です。


ソリス、軽々と無敗をキープ

◆Mar.14 2008@バイエルン州ミュンヘン(ドイツ)
会場:Zenith - Die Kulturhalle
プロモーター:Ahmet Oener : Arena Box-Promotion
テレビ放映:Permiere Live


ヘビー級 8回戦
○ オドラニエル・ソリス(111.90キロ)/7-0-0, 5KO
 ――判定 8R(3-0)――
× シセ・サリフ(120.30キロ)/22-10-0, 20KO








 #021で取り上げた、イタリアでの試合からわずか2週間後のこの試合は、2年と少し前にあわやデビッド・トゥアに勝ちかけた(2-1で負け)こともあるタフな黒人選手が相手。本来予定されていたブルース・セルドンが敵前逃亡したための代役。

 典型的な職業かませボクサーというか斬られ役というか、ホープや復帰戦の調整用としてよく声がかけられるなかの一人。

 そんな中でのサリフの特徴としては、同じレベルの相手ならすぐ倒すパワーはあるのでやたらKO率が高く(9割)、体格にも恵まれ、とにかく打たれ強い(10敗もしているが、KO負けはキャリア初期にレイ・オースティンに倒されたものだけ)。

 12月のジュリアス・ロング戦がそうだったが、体格負けするとパワー不足から倒しあぐねる傾向が見られるソリスだけに、このデカブツ相手にどう戦うかを注目していた。上位陣と戦う際の対応調整としては手ごろといえる。


 そうして、試合は、最初から最後まで、ガードを盾のように上げた覗き見スタイルから最小限の動作で距離を支配したソリスが完全にサリフをコントロールした。

 アマで培ったテクニシャンとしての面を存分に見せつけ、まさに完封勝利といっていい勝ち方だ。

 さばいたと言っても、足を使ってアウトボクシングをしたわけではない。正面から対峙し、押しては引き、引いては押しで、サリフに何もさせなかった。

 ガードの隙間から被弾したパンチは数えるほどで、それもかする程度だろう。

 完全防御でどっしり構えた体勢から、空いたところに数発軽くピンポイントでコンビネーションを打ち込むと、すぐさまステップをきって巧みに間合いを外す。パワーと体力、スタミナを考慮し、深追いはしない。相手が打ってくれば、クロスでカウンターを被せるか、ガード後、打ち終わりにすぐさまワン・ツーを叩き込む。

 スピードとテクニックの圧倒的な差で相手の攻め手を丁寧に、丹念に潰す極端に慎重な封じ方。

 これをやられると、サリフからすればお手上げ状態だろう。あまり効かされてはいなかったが、実質、「投了」に近い状態へと追い込まれた。

 ソリスの調子は上々で、ステップは軽く、体さばきは実にしなやかだった。

 ブローは、相変わらず一発のパワーには難があるとはいえ、力み無く出る連打は非常にコンパクトでシャープ。ハンドスピードも中量級並みだ。

 カウンターの際に見せる反応の速さも特筆もの。硬質で切り詰められたコンビネーションは、フォームも回転も、ヘビー級とは思えないほど綺麗な軌道をみせる。

 年末の試合よりもスムースに動けているし、余裕綽綽、すでにして円熟期のような完成度だ(アマでのキャリアを考えれば当たり前かもしれないが)。

 徹底して打たれないことを最優先にし、強引には倒しにいかないソリスの慎重極まりない姿勢に不満を覚えるファンも多いだろうが、個人的にはこの特異な本格派スタイルは観ていて飽きがこない。ガードを固めるスタイルでいながら、ドイツ人の中〜重量級にありがちな、あのとんでもないド退屈さは感じない。

 ガードからジャブ! ジャブ! ジャブ! たまにストレート! という、×ットケやら×ルム、×エルあたりの眩暈がするような単調さを感じない。

 確かに、もう少し積極的に打ち込んで自分から仕掛けて欲しいところもあるが、一発一発のジャブ、ストレート、ボディ、コンビネーションを打つムーブ、前後左右のステップには、ネグロイドの比率が強いラティーノ特有のしなやかさとバネがあり、魅力的だ。

 バネの油切れしたロボットみたいなガクガクした硬さをもつ選手ではとてもこうはいかない。細かな動きだけで充分に魅せてくれる。



 文句なしのフルマーク判定でソリスは8戦全勝。大分、戦術の幅も広がってきた。

 デビュー直後の突進型やアマ時代のようなアウトボクシングに加え、インサイドからの攻防でも今回の試合のような対応ができるなら、この先も危なげなくランキングを上っていくだろう。

 別に勝負を急ぐ必要はまったくないが、いまのハシム・ラクマンやアンドリュー・ゴロタあたりなら、すぐにでも完封できるんじゃないかな。

 4月以降も毎月試合は予定されていて、4月の末はトルコで、そして5月にはついに米国上陸を予定している。

 なんと、HBOアフターダークにユリオルキス・ガンボアとコンビで登場するのだ。故ディエゴ・コラレスのマネジャーでもあったゲイリー・ショーの経営するプロモーションが、ソリスらが契約するアリーナ・ボックスと提携したことで実現した。

 ショーは二人に惚れ込んでおり、「わが社の主力選手として彼等をアメリカにプレゼンしていきたい」と言っている。

 HBOの番組に興行側として登場できるということで、これは2人にとって大きな飛躍の切っ掛けになるに違いない。期待して待ちたい。


▽バックナンバー
#022 3.14 バイエルン(ドイツ)興行より 前編
#021 2.28 ロンバルディア州ミラノ(イタリア)興行より
#020 1.05&2.22 アメリカ興行より
#019 2.23 ハレ・アン・デア・ザーレ(ドイツ)興行より
#018 12.29 ビーレフェルト(ドイツ)興行より
#017 12.23 ハレ・アン・デア・ザーレ(ドイツ)興行より〜その2
#016 12.23 ハレ・アン・デア・ザーレ(ドイツ)興行より
#015 10.31 プエルトリコ興行より
#014 10.30 ハリウッド(アメリカフロリダ州)興行より
#013 10.27 エルフルト(ドイツ)興行より
#012 10.19 ベルリン(ドイツ)興行より
#011 7.14 ニュータウン(アメリカ)興行より
#010 9.15 ロストック(ドイツ),6.16 ブタペスト(ハンガリー)興行より
#009 9.21 リューベック(ドイツ)興行より
#008 8.18 ベルリン興行より【後編】
#007 8.18 ベルリン興行より【前編】
#006 キューバ勢ウオッチ【亡命事件の顛末】
#005 キューバ勢ウオッチ【ビデオ観戦…の後編】
#004 キューバ勢ウオッチ【ビデオ観戦…の前編】
#003 キューバ勢ウオッチ【前フリ…の後編】
#002 キューバ勢ウオッチ【前フリ…の前編】
#001 はじめに


■おおひなた れい
19○○年生まれ、東京都出身。八王子に屹立する某美大に、不真面目に通う院生。WEB2.0環境の恩恵を受けて以来、本格的に海外ボクシングを見始める。ジョイス・キャロル・オーツの『On Boxing』やブコウスキーに触発され、ボクシングと芸術の関わりについて日々考察中。約2分ほどプロボクサーを志した過去もあり…。

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