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zoom RSS あれは3年半前 ... 再録「冨樫リングアナ登場!」 -後編-

<<   作成日時 : 2010/01/26 23:45   >>

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 先日の[内山高志×佐藤幸治]につづく、冨樫光明リングアナウンサーのインタビュー再録――後編です。

※一部誤字や表記の修正をしてあります。肩書きや所属等は、取材した2006年8月当時であることもご了承願います。


◇   ◇   ◇   ◇   ◇

「世界」を模する童顔のMC、語りおろし――
冨樫リングアナ登場!
-後 編-
前 編 《《《

取材・文/鈴木成章

◇   ◇   ◇


日本スーパーバンタム級タイトルマッチ。試合役員を紹介します。タイムキーパー……、コミッションドクター……
《日本スーパーバンタム級タイトルマッチ、福原力也(ワタナベ)対山中大輔(白井具志堅)。2006年6月17日、後楽園ホール》

 いまだ「昭和」を色濃く残すプロボクシングの常打ち小屋、後楽園ホール。ほんの少し前まで、世界タイトルマッチ以外の地域タイトル戦では、両選手が入場した後はただ淡々と、開始ゴングに向けて段取りが消化されていっただけだった。日本一、あるいは東洋一の座を巡って争われる試合も、前座の4回戦も基本的には同じアナウンス。そこにある種の物足りなさ、そっけなさを感じていたファンも少なからずいたのではないだろうか。

「タイトルマッチの前に試合役員を紹介するようになったのは、『これだけ多くの人たちが、ちゃんと資格を持った人たちがこのタイトルマッチに関わっているんだ、支えているんだ』ということを伝えたかったんです。

 採点を読み上げたり、KOやTKO、負傷判定のときにレフェリー、ジャッジの名前をフルネームで読み上げるのも同じです。それだけ責任ある人たちが下した判断なんだっていうことを、伝えたいんですよ。それを通して、ボクシングという競技がいかに成熟しているかを伝えたいんですよね。比較するつもりはないんですけど、K-1やプライドのファンたちが、『魔裟斗と山本KIDはどっちが強いか』みたいな話をしますよね。これってつまり、バックグラウンドにある競技が成熟してないから起こることだと思うんです。要するに選手個人への興味なんですよね。

 ボクシングだと、『クレイジー・キムと大曲輝斎(ヨネクラ=日本ウェルター級チャンピオン)、どっちが強いか』みたいな、まあ同門なんでこの対戦はありえませんけど(笑)、そういう話になったとして、それぞれがどういう戦術を取るか、みたいな話になるでしょう。そうやって選手個人への興味から入っていっても、その先にはマニアックに探求できる世界があるんですよね。

 大曲は日本ウェルター級チャンピオンで、じゃあ同じウェルター級って何キロなんだろうか。147ポンド、66.6キロだと。じゃあ、その前後のクラスは何キロなんだろうとか。ぼくも自分でボクシング雑誌を買うようになってから、覚えましたからね。『ヘビー級の下はクルーザーだっけ、ライトヘビーだっけ』とかね。それで、自分の体重はポンドに直すとどれくらいで、何級なんだろうとかって感じで興味も広がっていくと思うんですよ。これは実生活でも役に立つんです。

 学生時代にイギリスに留学していたんですけど、あっちはキロじゃなくてポンドなんですよね。当時体重が63キロくらいで、だから『ああ俺はいまスーパーライト級くらいだから140ポンドだな』みたいに(笑)。実際のリングアナウンスでは、メキシコのようにキロで言うのは(日本では設置されていない)スーパーミドル級以上のときだけです。西澤ヨシノリさん(ヨネクラ=元東洋太平洋スーパーミドル級チャンピオン)の試合とか、ヘビー級の東洋太平洋タイトルとか。

 だからミドル級までは、ポンドで言います。せっかくボクシングをみに来るんだったら、そういうことも覚えればもっと楽しめますよ、と思って。『ポンドって何キロなの?』みたいなところからも、探求してくれたらうれしいなあって思いますよね。

 ぼくの夢は、『ボクシングを男の一般教養に』なんです。プロ野球12球団の名前を言えない人って、少ないですよね。それと同じように、いまの日本チャンピオンの名前が全員言えるような人が増えてくれたらって考えてます。意外とそういう日が来るんじゃないかなあなんて思ってるんですけどね。

 興行が終わって水道橋駅近くの飲み屋さんでお客さんに声かけられて、『ユナニマス・デシジョンって、何ですか?』とか聞かれることもあるんですよ。で、それは満場一致という意味で、英語の綴りは…って説明すると興味深く聞いてくれる人はけっこういるんですよ。たとえばそういう人が英語の試験で『unanimous』って出てきたときに『あ、これはボクシングで出てきたな、満場一致だったっけな』みたいに思い出してくれたら、こんなにうれしいことはないですよね(笑)

 最近、タイトルマッチのときに試合前のコールでチャンピオンが何代目なのかを言うようにしたのも、日本スーパーバンタム級チャンピオンは過去にもたくさんいたけど、第何代ってつくと、それはその人しかいないんですよ。そういうことを伝えたくて始めたんですけど、そこから遡って過去のチャンピオンにどんな選手がいたか、知ろうとする人が出てきてほしいんですよね。いまはネットで検索かければ出てきますから。『えー、お前知らないの? 山中大輔の3代前のチャンピオンは中島吉謙だよ。知らねえの?』みたいな会話が高校生、大学生くらいの男の子たちの間でかわされてほしいですね(笑)。『就職試験で出るからボクシングの日本チャンピオン、全員覚えるぞ』とか」


 でも、ボクシングはマイナー競技化しているのではないか、と疑問を投げかけると、実に力強い反論が返ってきた。

「よくそういうことを聞きますけど、決してそうではないと思うんですよ。確固たる地位を築いているスポーツですよ。そりゃあ、昔みたいに新聞のスポーツ欄にノンタイトル戦が写真入りでデカデカと報じられることはないでしょうけど、世界戦があれば写真と広いスペースで、日本タイトルだって結果だけは一般紙に載るじゃないですか。これはほかの格闘技ではあり得ないことですよ」


Ladies and gentlemen, good evening and welcome.
ニッポンノ、ボクシングファンノミナサマ、コンバンハ!
Good evening to you ladies and gentlemen. Welcome to the Yokohama Arena, for the World Premium Boxing and the first world title attraction
《ジミー・レノン・ジュニア。2005年9月25日、ワールド・プレミアム・ボクシング。横浜アリーナ》

 ジミー・レノン・ジュニアとマイケル・バッファ。世界のトップ・リングアナウンサーは誰かと言われたら、多くのボクシングファンは迷わずこの両名をあげるだろう。

「ぼくの目指す方向として、『もしジミー・レノン・ジュニアさんが日本語でアナウンスするとしたら、どうやるだろう』というのがあるんです。マイケル・バッファさんももちろん、素晴らしいリングアナウンサーです。この2人のアナウンスは、それだけで十分に聞く価値のあるものですよ。録画したWOWOWのビデオを見るときだって、疲れていたらリングアナウンスだけ見て、後回しにしちゃうときだってありますから(笑)

 ただ、なんていうか…マイケル・バッファさんのワイルドさよりも、レノンさんの品のよさっていうんですか? そういうところにぼくは惹かれています」


 昨年9月のワールド・プレミアム・ボクシング。冨樫さんはこのとき初めて、レノン氏と対面した。「これですよ」と言いながら携帯電話の待ち受け画面を見せるその姿はあこがれの人に会えたことがうれしくてたまらないという風情だった。

「待ち時間がけっこうあって、隣りに座っていろいろ話すことができたんです。まさかこんなに早く会えるなんて思ってもいませんでしたからね。前の日から何を言おうかずーっと考えてて。

 すごく気さくな人でしたね。自分にとってはアイドル以上の存在で、あなたみたいにアナウンスができたらいいと思っているということを伝えたら、『おお! ありがとう!』みたいな明るいノリで(笑)。ぼくのアナウンスについても、社交辞令だと思うんですけど『日本語の内容はわからないけど、声のトーンがいいね』ってほめてくれて。

 本番の世界戦《新井田豊(横浜光)対エリベルト・ゲホン(フィリピン)》ではああいう結果(負傷判定で新井田の勝ち)になって、プロモーターの(帝拳ジム)本田明彦会長が『日本語で説明したほうがいい』っていうことで、サポートさせてもらいました。

 あの試合を1人でアナウンスしたかったって? まさかまさか、そんな恐れ多い。もう、『どうぞ、お願いいたします!』ですよ。それよりもリングの中でレノンさんのアナウンスを聴いちゃいましたからね。いやー、もう心地よくて(笑)

 あ、そうそう。レノンさんがいつも『IT’S SHOWTIME !』ってやりますよね。あれに匹敵する日本語の煽り言葉を探してます。いいアイデアがあったら教えてください!」



スピードキング! トシオカ〜ニシオカ〜〜!!
《日本テレビ放送網・船越雅史アナウンサーによるもの。WBA世界フライ級タイトルマッチのセミファイナル、西岡利晃(帝拳)対サムエル・ベントゥーラ(メキシコ)。2001年3月11日、横浜アリーナ》

 日本語と英語の、いわゆるチャンポン。そして英語風の日本語読み…。いまだ、ボクシングファンの間で語り継がれている“伝説”のリングアナウンスだ。

「あの船越さんのアナウンスは、間違えてしまったところばかり取り沙汰されていますけど、画期的でした。ぼくたちがやっていないときに、しっかり戦績もコールしているし、ニックネームもそうです。ぼくは当時、いつ戦績のコールをを始めようか考えていた時期で。それで安河内に相談したりしていたんですけど、あれを聞いて『やられたァ』って思いました。先を越されて悔しかったですね。

 船越さんにはすごく感謝しています。あのコールがあったから、『やってみましょう』って提案できたんですから。あれがなければ、もう少し時期は後になっていたと思います。船越さんが風穴をあけてくれたんですよ」


 冨樫氏がマイクを持つようになってから、7年以上の年月が流れた。その間、彼のアナウンスも変化、いや、進化してきていると言っては失礼にあたるだろうか。近年、顕著なのは、日本語へのこだわりだ。

「無敗の選手を『undefeated』と紹介したり、勝ち星すべてがKOの選手を『オール・ノックアウト』って言ってました。でも、最近は日本語で表現できるものは、原則として日本語で紹介しようと思っているんです。日本語に置き換えられない、ボクシング用語だけは英語になってしまいますけど。

 たとえば『ノックアウト』がそうですよね。判定結果の『ユナニマス・デシジョン』や『マジョリティ・デシジョン』もそうです。これは立派なボクシング用語なので、そのままコールしたいと思っています。

 英語を使わないようになると、アナウンスの印象も変わってくるんです。英語を交えていたときは、どうしても単語の羅列になってくる。そうすると、アナウンスは自然と『絶叫型』になるんですよ。

 これが日本語中心のアナウンスだと、どうしても説明が単語から文章になる。そうなると、そのなかでいかにいいリズム感を心地よいものにしていくかが重要になってくるんです。

 ふだんぼくは、リングアナウンスに生かせないかと思ってJ-WAVEを聴くようにしているんですけど、日本語が本当にきれいというか、心地いいんですよね。クリス・ペプラーさんやジョン・カビラさんの日本語が。ああいう心地よさ、正しい日本語とリズムで、リングアナウンスができたらって思いますね。いまはそこにこだわっています。

 それと、服装にもこだわっているんですよ。気がついている方は少ないかもしれないけれど。夜の興行のときは、ご存知の通りタキシードを着ています。昼間のときはディレクターズ・スーツといって昼用の礼装をしているんです。

 ただ、1度だけ昼の興行でタキシードを着たことがあるんです。さっきも話した、佐藤修選手の世界戦で。どうしても(佐藤のイメージカラーである)黄色のボウタイを締めたくて。ちなみに坂田健史選手のときは青です。

 そうやって自分にできることを通じて、会場に来るお客さんにも、『あぁ、ボクシングはさすがだな』って思ってもらいたいんですよね。『ぼくの』アナウンスじゃなくて、ボクシングはやっぱりいいな、と。

 ぼくが目立ってしまってはいけないんですよ。リングアナウンサーは、脇役中の脇役ですから。まずはボクサーがいて、レフェリーやジャッジがいて、試合役員がいて、それで初めてリングアナウンスが必要になってくる。周りのみなさんがいてナンボの役割だと思っています」


《完》

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