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zoom RSS 負け知らず 【酔いどれ前のひとりごと vol.139】

<<   作成日時 : 2013/12/15 21:30   >>

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vol.139 負け知らず


 ノンタイトル戦ながら時の王者を倒し、さあいよいよ世界タイトルマッチ、というところで網膜剥離に襲われ、戦わずして涙を呑んだ。そういうボクサーがいたことをあとで知った。

 ローマ五輪で銅メダル。ボクシング競技で日本人初の表彰台だったが、準決勝で勝ちを負けにされたきらいが、残ったわずかな映像や証言から感じられる。ならばプロのリングで一番になればいいとご本人は思われたかどうかはわからないが、プロ転向しても快進撃は続く。

 迎えた1967年2月、10回戦の契約で世界フライ級王者オラシオ・アカバリョに6回TKOで完勝。昔はあったんだよなあ、世界王者のノンタイトル戦が。そして今度は当然、世界タイトルが懸かった再戦が組まれた。自然な流れだったがここでいきなり幕がおりる。

 複数階級だの防衛回数だの最速奪取だの連続KOだの海外勝利だの、それら輝かしい記録は色褪せつつも長く久しく語られるだろう。いっぽうで、勝負の行方はわからないが、とにかく世界戦をやってほしかった、やらせたかったと言われ続けるボクサーがある。

 ボクシングの光と影、そう断じて、したり顔をしたりして、けど、今ではもううるさいくらいの数字の羅列よりも、情感に訴えてくるような出来事のほうにパワーを感じてしまうのはなぜだろう。

 当時を知る人々は今でもきっと世界戦をやらせてやりたかったと思っていると思う。悲運のボクサーと呼ぶには失礼な気がするし、実際、《悲運》というのがどういうことなのか僕にはよくわからず、今もってこの二文字を使いあぐねているが、いちばん可哀想なボクサーだったよと、故エディ・タウンゼントのつぶやきを思い出す。

 わかるわけはないのに、わかったようなふうをして、寒風に熱燗ちびりながら戯れごとを並べる。

ブロンズメダル こいつのおかげで プロのリングで頂きを 極みかけたそのとき
目の前に黒い蝶 払えど去らず 拭えど消えず
ちっぽけな影におっきな道ふさがれて うめいてもがいてふためいて
なんてこった なんてこった
あふれる光が闇へと転じて 
夢は消えたけれど 消えぬ無念をわらわばわらえ
田辺清 負け知らず



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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。


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