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zoom RSS 怪物 【酔いどれ前のひとりごと vol.140】

<<   作成日時 : 2013/12/18 01:30   >>

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vol.140 怪物


 相手との力量の差や相性の好し悪しが勝負にはかなり影響してくる、というか、それこそが結果として残るんだろうけど、それにしても井上尚弥、強かったねえ。

 まじまじと見たのは初めてだった。感心した。パンチはスピードがあって無駄がなくて、むしろ無駄がなさすぎるくらいだった。左ボディも見応えあった。優秀なメキシカン・ファイターと見まがう出来映えだった。近く世界王者へ到達するんだろうなあ。

 もうすでに怪物って言われてるんだねえ。怪物かあ。

 1976年10月具志堅用高が9戦目にして世界王者になって13度の防衛をした。以後、日本ボクシングは具志堅シンドロームから抜け出せないでいる。

 具志堅の記録を抜くこと、これが優れたボクサーの証しになった。最速の世界奪取と最多の防衛、そして具志堅が果たせなかった海外での防衛。いまだ塗りかえられていないのは最多防衛だけになった。

 井上尚弥はさらなる最速奪取と最多防衛更新を狙っているようだが、う〜ん、できるかもしれないね。

 けどさ、具志堅用高の最大の功績は9戦目での世界奪取や13度の防衛ではなくて、あのファン・グスマン戦のあのファイトそのものだと、僕は確信している。観る者すべてをリングサイドまで引っ張ってきて、息詰まる攻防に息詰まらせる、あの時空の提供こそボクシングの醍醐味で、具志堅はそれを成し遂げた。

 だからさ、井上が具志堅超えを目指すなら、数字よりもそこらのところを意識してがんばってほしいなあ。なにも今から怪物なんて言われなくていいんだよ。誰がそう呼んだのか知らないが、怪物になれば怪物と呼ばれるようになるよ。

 できればさ、国内で怪物と言うんじゃなくて、欧米や中南米から、日本には怪物がいるとか、奴は怪物だとか言わせたいね。それまでは《井上尚弥》という名前だけでいいじゃないかと思う。

 ハッタリめいたリングネームや図抜けた記録ではもう大衆が来てくれない時代になってる。観客はあるよ。けれど大衆はいなくなってしまった。いなくなった大衆を呼び戻してほしいから、井上にかこつけて書いた。失礼の段、お許しあれ。


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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。


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