マック田口の《長谷川穂積V2密着記》・後編

(前編はこちら

 妻・泰子さん、長男・大翔君、長女・穂乃ちゃんの姿も・・・家族思いの長谷川選手にとってなによりも心強い援軍。

 国歌斉唱や選手紹介も滞りなく終わり、地鳴りのような大歓声のともに運命のゴングが鳴り響きました。

 1ラウンドで長谷川選手は持ち前のスピードとコンビネーションで、試合のペースをつかみます。

 そして2ラウンドにはもう、長谷川選手はウィラポンのパンチをすでに見切っていたように僕には映りました。もちろん、KOできるパンチ力をウィラポンが持ち合わせていないことも。

 大胆でスピードのある連打がウィラポンを追い込んで・・・特に左右のアッパーが効果的にウィラポンの顎を捉えていたのが目立ちます(長谷川陣営が今回の秘策として用意していたのがこの左右のアッパーだったそうだ)。

 時折、ウィラポンの右が長谷川選手の顔面に当たるが両手を上げて「効いていない」とアピール。そしてウィラポンの壊に潜り込み接近戦を展開、ここで山下トレーナーが発案した“チューブトレーニング”の効果が出ます。

 回転のよい連打が見事にウィラポンの体に突き刺さり、必死に耐えるウィラポン。だんだん痛々しく思えてきました。

 3~5ラウンドは完全に長谷川選手が試合を支配。ウィラポン陣営にもいよいよ焦りの色が見え始めます。

 6ラウンド、長谷川選手の左のダブルがウィラポンがグラつかせました。

「もう負けることはない」という緩んだ雰囲気に近くなったところ、ウィラポンは続く7、8ラウンドを強引なまでのボディーブローで流れを引き戻そうとしてきたのには驚きました。この衰えぬ執念はスゴいものでした。

 そしてそして9ラウンド開始早々-----。

 長谷川選手が左ストレートから右フックを放つとウィラポンの姿がロープ越しの僕の視界からスッと消えた! 誰もが息をのんだ一瞬の静寂後、大歓声が上がります。ウィラポンがダウン!

 あのウィラポンが懸命に立ち上がろうとするも完全に足にきているのは明らか。10カウントまで数えることなく、レフェリーは両手を左右に振り、試合は決着しました。

 長谷川選手は笑顔でガッツポーズ、そしてジャンプして全身で喜びを爆発させます。山下トレーナーが一目散に長谷川選手に駆け寄り肩を抱きしめ、千里馬会長と玉マネージャーはその光景を親のような眼差しで見つめている光景・・・会場の観客も総立ちとなって祝福の歓声を送っていました。

 なんという劇的な結末、気がつけば僕は泣いていました。地元神戸での文句のつけようもない完璧な返り討ちに、僕の心は震えました。


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 それにしてもあのウィラポンが・・・伝説が崩壊していく様を目の当たりにし、悲しく切ない思いにも耽ってしまいました。

 これが勝負の世界なんや・・・勝者と敗者の残酷なまでのコントラスト、忘れられない光景でした。

「自分がいつか負けるまで、できるだけ強い選手と戦って、強くなりたい」

 長谷川選手は、まだまだ進化をやめない、王者らしい頼もしいコメントを残してくれました。

 試合後、控え室につながる通路でチャンピオンの家族と会いました。あいさつ程度の会話しかできませんでしたが、妻・泰子さんの安堵感に満ちた表情が印象的でした。

 家族の方を見てあらためて、無事に試合が終わったことに僕も安堵・・・。

 こんな素晴らしい試合をお手伝いする機会に恵まれ、歴史に残るであろう瞬間にも立ち会えた僕は幸せ者です。

 あらためて、長谷川選手おめでとう。そして、ありがとうございました。

(了)

[あしボク特派・マック田口]
 Makoto "Mac" Taguchi


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WBCスーパーフライ級チャンピオン、徳山昌守選手も祝福に!

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