酔いどれ前のひとりごと vol.94 ゴキブリ発言

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vol.94 ゴキブリ発言


 内藤大助選手のことを亀田父子がゴキブリにたとえた発言をしました。いけませんなあ。相手をおとしめるにせよ仕掛けるにせよ、言っちゃあいけないラインがあります。

 戦争だって喧嘩だってルールがあります。法律で定めてあったり、暗黙の決まりであったり、それなのに、無視して、原爆おっこどしたり捕虜を虐待したりしやがるんですけど。

 人気回復に躍起になってる日本ボクシングみたいに、なんでもありの世界なんて、おっと失礼、そんなにはありません。そんなことしていたら泥沼にはまっていくだけです。

 ゴキブリ発言で思いだすのは、1975年にフィリピンのマニラでやった世界ヘビー級タイトルマッチ。

 前にも触れたことがありますけれど、モハメド・アリジョー・フレイジャーをゴリラにたとえて挑発しました。フレイジャーはあれで深く傷ついた、と、その後のフレイジャーのインタビュー等で、思いますねえ。アリにしたら軽いリップサービスのつもりだったかもしれませんが、振り返れば、生涯の大失言だったんじゃないでしょうか。

 アリは“ザ・グレイテスト”だから何を言ってもいいんでしょうか。フレイジャーはアリに対して、なにか悪さをしたんでしょうか、許しがたいことをしたんでしょうか。ゴリラと蔑まれるような人物なんでしょうか。

 フレイジャーがどんな人間なのか、もちろん知りませんが、フレイジャーの戦いぶりを見たら、特にその負けっぷりにはいつか気持が震えてきます。アリとのマニラでの戦いはパンチを雨あられと浴びても前へ前へ、ジョージ・フォアマンとは2度やって歯が立ちませんでしたけれど倒れては起き、倒れては起きと、愚直を絵にかいたようなボクシングでした。

 愚直は悪いことか、くだらないことか。

 アリにすれば、フレイジャーやフォアマンは白人におもねる黒人に映って許せなかったのかもしれませんが、拳を交えれば、同胞であることを、いいえ、拳なんか合わせなくっても、アリなら、とうに同胞であることを知っていたと、これはわたしの都合のいい想像にすぎませんが。

 だから、と、ここで話は一気に冒頭に戻りますが、どうしても生き物にたとえたいなら、くさすんではなくて、ハヤブサみたいに速いとか、豹のようにしなやかだとか、持ち上げてやって、せやけどよく見たらスピードあらへん、足なんかしょっちゅう2本そろっとる、気の毒ンなるわ、などと落とせばいいわけです。

 そのときどきで違ってはきますけれども、動物でも植物でも、憧れや驚きを感じるものと、そうでないものとがありますから、相手を見下すのに、同じように見下せそうな生き物を引き合いに出すのは、はっきり申し上げますが、ルール違反です。引き合いに出された生き物も迷惑です。

 誰がそないなルール決めたんや、と、お父さん、お怒りならば、わたしが決めたと申し上げておきます。ほんとは、世の中のルールとして昔からあるじゃないですかと、耳打ちしたいんですけど。

 念のため申し添えますが、こいつとは縁を切る、というときにはそれこそなんでもありのぼこぼこ世界で構いません。

 で、なんですねえ、いったん言葉に出してしまったものは戻りませんから、ゴキブリはそこらを徘徊しちゃってます。

 口から出たゴキブリ、身から出た錆。残念ですが、亀田大毅はおのれの失言によって、戦わずして敗れたり、そういう思いをわたしは強くしています。けど、先制攻撃が効を奏して勝っちゃったなんて、こんなことも世の中の不条理としていっぽうにあることはあるんですよね。いやはや。


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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。


この記事へのコメント

まともじゃないんだから
2007年08月24日 18:50
まともなこと言っても通じないよ。ボクシングだけじゃなく頭も弱いんだし。
ばか
2007年08月24日 23:57
ゴキブリはゴキブリ。誰が見てもゴキブリの動きじゃん。よく言えばムカデ。

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