オールド・ファッション・ボクシング~7 【酔いどれ前のひとりごと vol.116】

画像


vol.116 オールド・ファッション・ボクシング
~タイソンからパッキャオまで~7


 1993年注目の3番勝負。

 3月、ジュニアフライ級でマイケル・カルバハルがダウンをはねかえしてウンベルト・ゴンサレスに7RKO勝ちした。攻勢のゴンサレスをカルバハルがワンチャンスで倒しきった。こういうことが世の中にはあるものさ…と言いたくなる、絵になる試合だった。

 9月、4つ目のタイトルを狙って、フリオ・セサール・チャベスがウェルター級のパーネル・ウィテカーに挑んだが、分の悪い引分に終わった。当時のパウンド・フォー・パウンドを決める一戦とも言われたが、チャベスの攻めは空転を続けた。すぐあとにやってくる初敗北の予兆だったのかと、あとでまたこの一戦を思いだした。

 ウィテカーのボクシングは難解で、識者はそれを無類のテクニシャンと評するが、それだけでは僕ら素人にはわからない。

 射程外で相手のパンチを受けないのではなく、射程内、むしろ射程の奥に入ることによって、距離を消し、相手がナックルパートを当てられない位置に身をおいて相手パンチを外す、そうして自分は打つパンチと当てるパンチを巧みに使い分けて点数を稼ぐ。そういうふうに僕には見えた。

 そういうボクシングは技巧の極致であったのかもしれないが、ウィテカーを見るたびに玩具の知恵の輪を思いだし、かすかなフラストレーションを覚えた。

 ちなみにウィテカーが知恵の輪なら、当時IBFバンタム級王者のオルランド・カニザレスはゴムまりだった。小学生の頃に興じたドッヂボール、そこで使った球、空気がいっぱいに入ったあの球を、カニザレスのリズム・ボクシングを見るたびに思い浮かべていた。変だよね。

 11月、イベンダー・ホリフィールドがリディック・ボウを判定にくだしてWBA/IBFヘビー級タイトルを取り返した。ボウには第1戦ほどのキレがなかった。これでまたヘビー級戦線が変わっていった。

 判定でごたごたすると、専門家は、リングサイドのジャッジの視方と茶の間の素人の視方は違うなんて言うんだけど、なことわかってるさ。

 視点が変われば見え方も変わる。当り前のことじゃん。“夜目遠目笠の内”っていって、女はそういうふうに見ればきれいなんだそうだけど、われわれ素人への教育指導として、リングサイドにカメラ据えて、その映像を茶の間に流すのもいいんじゃないかなあ、これがプロの視点ですっていうことで。

 判定がゴタゴタしないときは、ふつうに映像見ながらああじゃこうじゃ解説するくせに、ゴタゴタすると、ジャッジの視方がどうじゃらこうじゃらで、つまりはおれたちは正しいというような話が始まる。

 ふだんから場面場面でジャッジから視るとこういうふうに見えるんですと教えてくれればいいのに。

 まだまだあんだけど、ボクシングの採点て、うるさくなっちゃったなあ。客観を装ってはいても実は主観が元にある気がすんだけど、それがいい悪いってことじゃなくてさ。

 おいおい、また・・・・。


▽バックナンバー
vol.115 オールド・ファッション・ボクシング~6
vol.114 オールド・ファッション・ボクシング~5
vol.113 オールド・ファッション・ボクシング~4
vol.112 粟生隆寛、1ラウンドKOを命ず
vol.111 オールド・ファッション・ボクシング~3
vol.110 世界を制する左を
vol.109 オールド・ファッション・ボクシング~2
vol.108 オールド・ファッション・ボクシング~1
vol.107 粟生惜敗で思い出す「女神」…つづき
vol.106 粟生で思い出した「女神の機嫌」
vol.105 粟生が逃したチャンス
vol.104 がれき
vol.103 大場政夫の強さについて
vol.102 ずるずる負け
vol.101 たわごと・ざれごと・えそらごと Part 3
vol.100 日本最高試合その3
vol.99 日本最高試合その2
vol.98 日本最高試合その1
vol.97 たわごと・ざれごと・えそらごと Part 2
vol.96 たわごと・ざれごと・えそらごと
vol.95 追放
vol.94 ゴキブリ発言
vol.93 辰吉、魅惑の3番勝負
vol.92 それぞれの落日
vol.91 運の悪い男
vol.90 ロッカールーム
vol.89 重箱のスミ~2006年12月号
vol.88 重箱のスミ~2006年11月号
vol.87 アウトがセーフ
vol.86 重箱のスミ~2006年10月号
vol.85 ラウンドガールは飯島愛
vol.84 重箱のスミ~2006年9月号
vol.83 夢の始まりは…
vol.82 重箱のスミ~2006年8月号
vol.81 拳聖ふたたび
vol.80 重箱のスミ~2006年7月号
vol.79 重箱のスミ~2006年6月号
vol.78 重箱のスミ~2006年5月号
vol.77 重箱のスミ~2006年4月号
vol.76 重箱のスミ~2006年3月号
vol.75 悪いのはだれだ? おれだ…
vol.74 オサム会長はおっきいのがお好き
vol.73 重箱のスミ~2006年2月号
vol.72以前 夜明け前,カメダ・ワールド,重箱のスミ~2006年1月号,逆転の貴公子,ほんの少しの恐怖,ジャブを出せ,ガッツ石松 vs ロベルト・デュラン~もちろん架空~エキジビション,最強という名の幻想,年間最高試合について,これぞ伝説,アリ、フレージャー、そしてフォアマン,だけどファイティング原田は好きだった,なんとなく空想対決[G.フォアマン vs B.サップ],拳聖....etc.


■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック