オールド・ファッション・ボクシング~8 【酔いどれ前のひとりごと vol.117】

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vol.117 オールド・ファッション・ボクシング
~タイソンからパッキャオまで~8


 至近距離で同じようにパンチを出しあっているのに、片方は打たれ片方は打たれずにいる、なぜだ――。

 フリオ・セサール・チャベスを初めて見たときの印象で、1984年9月のマリオ・マルチネス戦だった。

 それから10年余りたった1994年1月、世界ボクシングを牽引してきた不敗王者はダウンまでして敗れた。いつか来るかもしれない時がきた。チャベスはしかし戦い続けて、5月フランキー・ランドールに一応の雪辱を果たした。

 6月、アイク・クォーティーがクリサント・エスパーニャを鮮やかに倒す。

 いっぽうで7月、オスカー・デラホーヤはホルヘ・パエスとのWBOライト級王座決定戦を2RKOで勝ち、早くも2冠達成。パエスは好きなボクサーだったが、いくらで寝たんだよ、空涙まで見せて、そうさ、長い物には巻かれるがいいさ、巻かれて抱かれていかれちまえ。と、いや、これはおいらを振った女への未練たらたらの捨てゼリフ。

 11月、IBFスーパーミドル級タイトルマッチでジェームス・トニーにロイ・ジョーンズが挑む大物対決があった。試合が進むにつれ緊張が薄れてゆくと、ウルトラマンの怪獣同士が戦っている図がだぶってきた。

 トニー初敗北。けど、ジャッキー・カレンていう女マネージャー、おいらの助平心と勝手なやっかみから、名前を覚えてしまった。

 12月、WBAミドル級タイトルマッチでホルヘ・カストロが左フック一発の逆転KO勝ち。まぐれ当たりだろうけど、朦朧の中で放った一発のパンチがのちの竹原慎二につながってゆくのをおもうとき、「最後まであきらめてはいけない」と言ったジョー小泉氏の文句が利いてくる。

 ひとさまは知らず、おいらは何事によらず最初からあきらめてることが多い。今夜は少し酔っている。

◇   ◆   ◇   ◆   ◇

 2009年5月26日、内藤大助が中国人挑戦者を判定で破って5度目の防衛をした。すきだらけで突っ込んでくる挑戦者だったから、ショートパンチを打ち抜けば試合は早く終わるだろうと、のんびり構えていたら案外の苦戦だった。

 王者はたまにヒットしても打ち抜けない感じで、ブーメランのようなフックが空を切った。

 追放の身だから名をあげてはよろしくないんだろうが、途中から、渡辺二郎が韓国で防衛した試合が思い起こされて・・・・あの試合で渡辺は出てくる相手にショートパンチを合わせて何度も倒した。若い韓国人挑戦者は全身のタガがはずれるくらいのダメージを負ったはず。

 そこまでではなくても、じきにいいのが当たって王者内藤の勝利インタビューになるんだろうと、目を離して、また見たら王者は苦しそうな様子で、まだ試合をしていた。

 タイでは久高寛之が挑戦したが判定負けだったらしく、これは僕は見ていない。世界戦において、殊にタイでは判定になれば王者だろうが挑戦者だろうが、負けたと見えても、同国人が勝つシステムになっている。

 そんなのは不正じゃないかと言ったところで、制度は変わらず、ならば倒すしかなく、西岡利晃が敵地メキシコで2RKO防衛をした星がいよいよ輝きを増す。男をあげたというのはこういうことを言うんだろうね。

 エキサイトマッチだけの放映の世界戦で、日本人が勝った試合はほかにあったかしらんと探してみたが、近ごろ物忘れひどく、出てこなかった。


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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。

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