妄想劇場「日本クルーザー級王座決定戦」 ~くたばれテンポイント #05

 しょうもない架空実況というか妄想劇の第5回目。やっぱり何となくテキトーに…長いですがよろしくご一読を―――。

演目:日本クルーザー級王座決定戦10回戦
》》》構成:酔いどれ《《《
時:2011年の盛夏
所:TACテレビのモニター室

登場人物(全部架空・・・いうまでもなく)
さぶろう:ひねもす三郎(作家/69歳)
ますお:あらため益男(編集者/52歳)
ゆうぞう:さかしら勇造(評論家/45歳)
ゆりこ:やまざくら百合子(女優/28歳)
きんじ:かしおり金治(TACアナウンサー/36歳)


#04 出るか、100-100

【#05 いつの間にかもう4ラウンド

きんじ さあ、4ラウンドです。このあたりから、どちらも、そろそろ仕掛けていかないと。

さぶろう なーんも始まんねーよ。

ますお 田上選手は4ラウンドKO勝ちが3試合あるんです。ですからこのラウンド注目したいですね。

きんじ えっと、申し遅れましたが、両者の戦績なんですが、副音声なのでつい省いてしまいましたが、あらためさん、これもまたあらためて簡単に紹介願えませんか。

ますお はい。えーと、赤コーナーの宮古選手ですけど、10戦6勝2敗2分け、6勝のうち2勝がKOです。青コーナーの田上選手、9戦7勝2敗、7勝のうち3勝がKOです。

きんじ 田上選手の3KOすべてが4ラウンドKOということですね。

ますお そうです。田上選手というのはスロースターターなんですけど、序盤をおえて急に爆発するところがありまして、それがだいたい4ラウンドあたりなんですね。

さぶろう それってクルーザー級にあがる前のミドル級でやってた4回戦のときの話じゃねえの。

ますお いや、ま、そうですけど、序盤に動きが見えないのは今も変わりません。

きんじ えー、さかしらさん、いかがですか、ここまで見てこられて。

ゆうぞう はい、皆さんのお話を愉しく伺っていました。ボクは門外漢なのでわからないことが多いんですが、どうぞ笑わないで聞いてください。ジャッジの問題なんですけど、オリンピックの柔道競技で、いや、ま、ちょっと、昔、柔道はかじったことがあるもんで、で、えー、いつだったか、世紀の誤審と言われた勝負がありました。外人選手が投げ技をかけた、その技をはずして、すかさず投げ返して勝ったはずの日本人選手が、次の瞬間、審判に負けにされたことがありました。決勝戦でしたからその日本人選手は本来は金メダルだったのに銀メダルに泣きました。オリンピックの金メダルと銀メダルとの差というのはすごいものですよね。競技種目にもよりますけれども、どうでしょうか、世界チャンピオンと世界ランカー、それくらいの違いがあるんじゃないかと思います。金メダルを取ったか取らなかったかでその後の人生ががらりと変わりますよね。本人の気持ちが違ってきますよね。

さぶろう 久しぶりにしゃべったと思ったら、えらい話が長いな。

ゆうぞう 平和の祭典で参加することに意義があるという建前の場ですから、抗議はしても暴れるわけにもいかず、判定が覆ることはありませんでした。ボクは今でもあのときの、何事もなかったという様子の審判団の退場シーンと、呆然と怒りとがないまぜになったような日本人柔道家の表情とが脳裏にあります。えー、で、まあ、何が言いたいのかといいますと、ジャッジの未熟さということ、ほんとはジャッジの傲慢さということなんですが。

さぶろう 未熟な奴に限って傲慢なんだよ。

ゆうぞう さきほどひねもす先生が人間の能力にさほどの差はないから優劣をつけるのはむずかしいとおっしゃってました。その通りなんですが、競争する中で優劣を決めなければなりませんから、それが陸上や水泳のタイムとか球技の得点とか、はっきりしているものならまだいいんですが、見た目を判断しなければならない競技の場合、体操とかフィギュアスケートとかですね、もちろんそういう競技でもそれぞれに規定があって得失点があるんでしょうけれど、一般の人が競技を見て、その勝敗や優劣は、細かいことはわからなくても、わかるときはわかるし、わからないときはわからない、すみません、当り前の話なんですけれど、そういうものだと思うんですよ。ボクシングでもノックアウトになればそれは陸上や水泳と同じではっきりしていますが、判定試合になればこんどは体操やフィギアスケートと同じく見た目の判断になるわけですよね。そうしたときにどちらが勝ったということは、理屈並べて言うことはできなくても、ぼんやりわかるものだと、ボクは思っているんです。ですから観衆が感じた勝ち負けと正式な勝ち負けとが違ったとき、とりあえずボクシングの話として話ますが、微妙な判定とか疑惑の判定とか驚きの判定とか騒がれることがあるんだと思うんです。

ますお そういう試合は過去に何度かありました。

ゆうぞう そして、これは門外漢のボクが言うと、お叱りを頂戴するかもしれないんですが、そういう揉めたときの専門家の対応なんですが、これもさきほど、やまざくらさんがいっぽうの選手の肩をもってしまいましたと言われましたけれど、贔屓というものが出てくるわけです。肩をもつ選手が負けた場合は専門家はジャッジに対して不平を鳴らして、勝った場合はジャッジの正当性をしつこく唱えます。

きんじ さかしらさん、そのあたりでもう。

ゆうぞう いや、大丈夫ですよ。テレビの取材はよく編集されちゃって肝心のことがカットされて、逆の趣旨の発言みたいにされることがあるもんですから、ボクはテレビは警戒して、なるべくお断りしていますが、この番組はそのままのはずですから。

きんじ そのままはそのままですけれど、もしや、ま、そんなことはないんですけれども、万にひとつですね、なんか、こう、悪意のようなものがですね、さかしらさんの身に降りかかるようなことになってしまいますと、わたくしどもとしましては申し訳ないでは済まされなくなるやもしれません。

さぶろう おれの身には何があってもいいのか。

きんじ いや、そんなことは。

ゆうぞう 新聞雑誌のほうは、これも書いたものを勝手に変えられることがありますけれど、書いたものはコピーして持っていますから、改竄したところへは文句は言いますけれど、訴えを起こすまでの悪辣なものには至っていません。

きんじ それはそうでしょうが、どうも、なにか・・・・

ゆうぞう ご心配には及びません。ボクのところにはちょくちょく差出人不明の脅迫の手紙やら無言電話やらが来ます。なんですかね、やきもちですかね。やきもちやかれるほどの人物では、ボクは全然ないんですけどね。左派の政治家が暴漢に襲われたり右翼に家を焼かれたりという事件がありましたけれど、ボクには偏った思想はありませんからそういうことはないだろうと高をくくっていますし、もしや事件事故に遭ってもそれはそれだとたぶんどっかで思っています。そんなことよりも、ええと、贔屓の話でした。ボクは、これは面白いなあと思うんですけど、騒動が起こると、専門家はその渦中の誰かを贔屓にしているような言動を知らず知らずにすることが多くて、それに引きかえて素人のファンといいますか、その中には玄人はだしの眼力の持ち主もたくさんおられるでしょうが、そのお客のほうが純粋に勝敗を見ていると、ボクにはそう感じることがしばしばです。

きんじ はあぁ…

ゆうぞう あの、ちょっと余談なんですが、先日、取材で、ブレイクダンスというものを見にいったんです。若い人が、やるのは男の子ばかりなんですが、ダンスビートに乗って、ボクに言わせるとサーカスみたいな曲芸を舞台で繰りひろげるんです。そこでは二組が左右にわかれて交互に踊って、優劣を競ってトーナメントを勝ちあがっていくんですが、結構スリリングで面白いんです。そのときに主催者の方が言うには、優劣は素人が見てもわかるというんです。むしろ素人のほうがわかるというんです。ためしにどうぞと言われて、ボクは客席から見たんですが、舞台で交互にダンスをする2チームに勝敗をつけろとなると、こっちだなあ、あっちだなあって、なんとなくイメージでわかったような気になって、ところへ正規の判定がくだって、ボクの判断と一致するんです。もちろんブレイクダンスというものをボクは初めて見たんで、話としてはいい加減なんですが、ボクシングの判定にも似たような感じがあるんじゃないかと正直、ボクは思っています。

ゆりこ さかしらさんのおっしゃること、なんとなくわかります。

ゆうぞう 純粋に勝敗を見ようとする素人に対して、専門家のほうは、たぶん、なんらかの利害に縛られていて、まあ、ぶっちゃけてしまいますと、専門家にはメシのタネですけれど、ファンにはそれがないということだと、そう言うとまた口をとんがらかす専門家の方がおられるかもしれませんけれど。

さぶろう なんにでも裏があるさ。

ゆうぞう まあ、それで、話が飛んでしまうんですけど、これもまた贔屓と同様、ほんとは突っ込んではいけない部分だと、ボクは確信的に思っているんですけれど。確信的に思っているなんて、おかしな言い方ですね、すみません。で、せっかくの機会なので、ひねもす先生とあらため編集長にお聞きしたいのですが、ボクシングのジャッジというのは3名でやっていますが、どういう方がジャッジをされているんでしょうか。リングサイドの三方にそれぞれ陣取っていますが、どのような経歴なのか、なんらかの団体や組織に属されているのか、どんな人選でその試合の担当になったのか。また、ジャッジというのは日々どのような研修といいますか研鑽を積んでいるのか。ボクにはまったくわからないんです。ボクシングばかりじゃありません。見た目で裁定するスポーツ全般の審判員に言えることなんです。さきほど申し上げた、オリンピック柔道のとんでもない誤審、ああいうことがなぜ起こるのか。人間ですから誤ることはありますが、誤ったらそれを正してしかるべきなのにそれがなされない。誤っても、誤ってはいないというのが彼らの言い分なんでしょうが、大相撲だって、行司があんな目の前で軍配をあげても差し違えがあります。そうしたら土俵下からすぐに手があがって、今の一番をビデオテープで確認するそうですけれど、勝敗の審議をして、改めるべきは改めています。くどいんですけど、ジャッジの未熟、ジャッジの傲慢というものが、時にボクには見えてしまいます。

さぶろう あらちゃん、知ってる?

ますお ジャッジのことですか。

さぶろう おん。

ますお まあ、ある程度は。でも、わたし、ボクシングでメシ食ってるもんで。できればこれからもボクシングでメシ食っていきたいんで。

さぶろう だってさ。

ますお いえ、べつにあれですよ、ジャッジの皆さんがいかがわしいなんて、ンなことはこれっぽっちもないですよ。皆さん、真面目ですし、公明正大です。

さぶろう だってさ。

ゆうぞう やはりそういうことですか。

さぶろう おん。まー、黒衣(くろご)みたいなもんだと、深く考えず、浅く思う程度か。

ゆうぞう 歌舞伎や人形浄瑠璃の。

さぶろう おん。役割としては違うけどな。露骨にジャッジは誰それですって身分明かしちゃうと、各方面いろいろ大変なんじゃないの。脅しやらお願いやら逆恨みやら、ま、いろいろ。

きんじ えへん。えー、そろそろ4ラウンド終了です。このラウンドも動きがあまり見られませんでしたが、あ、田上のワンツーが今、どうですか。

ますお 当たってはいましたが浅いですね。もうちょっと踏み込んでいれば、それにしてもクリンチが多いですね。

きんじ レフェリングもこうなると、ガタイが大きいだけにたいへんですね、あっと、終了のゴングです。あらためさん。

ますお しょうがないですね、100-90で田上です。

きんじ ひねもすさん。

さぶろう 100-90で田上。

きんじ ほう、あらためさんと同じですね、理由を聞かせてください。

さぶろう 何の理由だい。100-90の理由かい、あらちゃんと同じということの理由かい。

きんじ いや、ま、そうですね、両方かいつまんで願えれば。

さぶろう 面倒臭いのと、誰かにくっついてゆけば安心かなと。

きんじ それはいくらなんでもちょっと無責任ではありませんか。

さぶろう 無責任だよ。ジャッジについての話があったもんだから、それに引きずられちゃったんだな。ジャッジってのは無責任かもしれないなあ、なんてよ。

きんじ えへん。えー、やまざくらさんは。

ゆりこ 100-90で田上選手のラウンドにしました。

きんじ これは驚きですね。100点法で3人が同一スコアになるとは思いもよりませんでした。

ゆりこ 今のラウンドは最後の最後で田上選手のパンチが軽くですけどヒットしました。10点法でも10-9で田上選手だと思うんです。それであたし、10点法に移して100-90にしました。ここでもう一度採点について見つめなおそうと思って、それで、今のラウンドを標準モデルに見立てて、これからのラウンドを見てゆきたいと思います。

さぶろう 百合ちゃんはしっかりしてるよなあ。いい奥さんになるよ。

きんじ えへん、えへん。

・・・・つづく

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