WOW FES "THIS IS BOXING"を・・・ちょっと斬る!

 10月24日、東京・両国国技館でのWOWOWエキサイトマッチスペシャル "THIS IS BOXING"は、メインを張る西岡利晃がいい試合を見せてくれ、個人的にその部分は非常に満足しているし、大いに賞賛を送りたい。

 ただ…

画像 西岡の試合を除いたとしたら、本興行の点数は50点がいいところ。厳しいかとも思うが、帝拳=本田明彦会長の打つ興行が日本最高峰である現状を鑑みれば、このくらいの評価は当然ではないか。

 山中慎介、亀海喜寛といった才能ある日本チャンプ、ホルヘ・リナレス、ローマン・ゴンサレスという〝ハイレベル〟かつ日本ファンになじみのある外国籍選手が豪華共演を果たしたが、終わってみればたんなる「顔見せ」になってしまった想いが強く残る。

 彼らと対戦した選手たちに感じた、真剣さや執念めいたものは希薄だった。それが、試合の濃度を著しく低下させるものになったのは明白だ。この興行の敗者たち(メインおよび4回戦カードを除く)は、本当に「試合」をしに来たのだろうか。〝ジャパンマネー〟と日本観光を目当てにやって来ただけではないのか?

 ボクシングは、IT全盛とデフレ不況の中でも、観戦料は大して(もしかしたら、まったく)下がらず、質やサービスも向上してはいない。今の時代、無料でインターネットを見て、無料で携帯ゲームを楽しめるのである。

 そんな時代の中で、10年前と変わらぬ価格で商品を提供するということが何を意味するのか、これをもっともっと真剣に考えねばならない。今の日本ボクシングははっきりいって、消費サイドにおんぶに抱っこの状態と言わざるをえない。
※2009年日本人の平均給与は405.9万円。10年前の1999年は461.3万円である。
(アルバイトやパートを含む給与所得者のデータ)



★WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
 西岡 利晃vs.レンドール・ムンロー


 これまでの西岡は中距離走型で、終盤に押し込まれる展開も目立った。正直、馬力型のムンローに押し切られるのでは? という心配があったが、西岡のボクシングの質そのものが変貌したことを確認できた一戦となった。

 長谷川穂積にもいえたことだが、無駄なものが削ぎ落とされた感じ。西岡の効果的なボディによってムンローの追い上げが激しくならなったことも幸いしたが、西岡は最後までよく足が動き、よく手数が出た。序盤からムンローの細かいパンチをもらっていたように、もっとディフェンス面の向上が期待できるのではないか。


ライト級10回戦
 ホルヘ・リナレスvs.ヘスス・チャベス


 相変わらずリナレスのボクシングは軽やかで、滑らかで、それでいて鋭い。フェザー時代に感じられたひ弱さも、徐々にぬぐえてきた。それでいてハンドスピードは以前より増している。リナレスのボクシングを日本で見られるということは、これは日本人にとって幸運なことであろう。リナレスに、そして本田会長に感謝。

 チャベスはキャリアの終焉を迎えるべき選手だ。リナレスのワンツーはほとんど見えていなかったのではないか。誰しもがリナレスのボクシングをもっと見たいと思ったし、華麗なKOでの試合終了を確信したが、それは裏切られた。肩の負傷による棄権という、なんともふがいない幕引きをチャベスは行なった。

 アクシデントで片付けるには、チャベスはあまりにも〝ちゃち〟なキャストだ。


★WBA世界ライトフライ級暫定王座決定戦
 ローマン・ゴンサレスvs.フランシスコ・ロサス


 ゴンサレスを負かすには、新井田豊や高山勝成をもっとスピード&テンポアップさせてゴンサレスの強打とコンビネーションを空転させつつ、ジャブとヒットアンドアウェイでポイントを奪い判定勝ちを狙うしかないのではないか。

 ロサスは果敢に打ち合い玉砕した。これはこれで少し熱くなったが、あとで冷静に考えてみると、あのゴンサレスと打ち合うなんて試合戦術もあったもんじゃないな、と。あれは、やぶれかぶれというか、玉砕覚悟の特攻そのものだったんじゃないのか。


★スーパーライト級10回戦
 亀海 喜寛vs.ホセ・アルファロ


 亀海は小野寺洋介山戦で男を上げた。元世界王者アルファロは、評価うなぎ昇りの亀海の実力を測る物差しという損な役回りだが、それを発奮材料にして鬼気迫る攻防を見せてくれると期待していた。お互いに打ち合いつつも、慎重に勝負どころを探るといった展開を見せる。体格によるパワー差も出始め、ペースは亀海かと思われた。

 亀海にとって、アルファロは大きな壁ではないことはわかった。それでよし、としてもいいのだが…なんだこの終わり方は。足でももつれて転んだんだろうと見えたアルファロにカウントを始め、アルファロも立ち上がらない。テンカウント数えたとたん、勢いよく立ってレフェリーに抗議。茶番としかいいようがない。

 会場のしらけっぷりを伝えられないのが残念だ。アルファロは「ダメージを残さないように試合を終えよう」とでも思っていたのだろうか。


★バンタム級10回戦
 山中 慎介vs.ホセ・シルベイラ


 入場口に控える山中がモニターに映し出されたとき、「二十代の西岡に似ているな」と思った。ファイトスタイルもどことなく似ている。山中には西岡ほどのパンチ力があるのだろうか? 今のところ、山中はタイミングで倒すパンチャーに見受けられるが。

 それにしても、このシルベイラは煮え切らないボクサーだった。のらりくらりとしたリズムで積極性もあまりない。退屈な展開のまま9ラウンドが過ぎ、そのまま突然ギブアップした。あと1ラウンドもできないほど、致命的な何かが彼を襲ったのだろうか。

 パンフレットには「新進気鋭の世界ランカー」と謳ってあったが、少なくともこの日、シルベイラはその評価に傷をつけたことだけは間違いない。

(一部敬称略)

[霜]

この記事へのコメント

ajidan
2010年10月31日 07:13
西岡戦が始まる前、テレビ画面から伝わってくるゆるく大人し目な雰囲気の原因が、何となくわかった気がします。それにしても空席が気になりました。先日の埼玉・内山戦もそうでしたが・・・。レポートありがとうございました。
マークン
2010年10月31日 13:14
初めまして。 約20年間ボクシングを見続けている40歳の会社員です。 今回はWOWOWテレビでの観戦となりましたが……たしかにテレビの画面からでも空席は目立ってました。 試合内容に関してですが…西岡・ホルへ・ロマゴンの対戦相手は少なくとも『勝つための最大限の努力』をしていたように思います。 ムンローのタフさ(我慢強さ)には脱帽したし…チャベスのパンチ(シリモンコンと戦った時よりは少しスローでしたが)そして何よりもホルへのシャープなパンチを何発もまともに浴びてもダウンすらしなかった!
仮に粟生選手や三浦選手(日本王者)が、チャベスと対戦した時には勝敗の行方は分からないと……ヤル気が無いように見えてしまうくらいの技術・スピード・シャープな動き等がホルへなんです。 アルファロは…もうロートルみたいな動きでした…それも亀海の技術の高さのせいだと思いたいですね。
トドール
2010年11月01日 16:29
あの面々が出ててる大興行で空席が目立ったというのは、、、痛いな。
CQ
2010年11月01日 17:35
客入り自体は6~7割といったところでした。
チャベスに関しては、自分の役回りを演じきってくれれば文句ないんですが、肩の負傷でリタイアとは…。
これではキャストとして2流扱いされても仕方ないのではないでしょうか。
リナレスも3回あたりから流し始めている(サービス優先)のが分かりましたので、結果、試合として弛緩したものに映ってしまいましたね。

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