長谷川穂積の言葉 【酔いどれ前のひとりごと vol.132】

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vol.132 長谷川穂積の言葉


 昨年12月20日にプロフェッショナル 仕事の流儀というNHKの番組を見た。

 ちかごろ珍しいボクシングドキュメンタリーで、登場したのは、ひとつき前にWBCフェザー級王者になった、ご存じ長谷川穂積。

http://www.nhk.or.jp/professional/2010/1220/index.html

 敗れてから再起を遂げるまでの物語で、番組そのものは先が読める展開で、新奇なものはないんだけれども、終りのほうでボクサーが発した言葉は、僕の心に残った。


 負けたら、一生自分を受け入れない自分で生きていかなあかん。自分を否定し続けて生きていくだろうなっていう、勝たないけない、自分を見失わないためにも ――。


 負けたらどうなって、だから勝たなければいけないというセリフに、理は通ってはいないと僕は思う。思うけれども強く残った。

 僕はボクサーではないが、僕は負けた者だし、自分を受け入れられない自分があるし、自分をしばしば否定する。

 自分をずっと見失ったままなのかもしれない。

 そんな僕の心の壊れた箇所が過剰に反応したにすぎないんだろうか。ともかく王者の言葉は僕の心に届き、まだ消えずにある。

 年始そうそう、年甲斐もなく青くさい話になってしまった。面目ない。


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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。

この記事へのコメント

birds of fire
2011年01月10日 19:45
このセリフはグサッと来ましたね。
多くの人が挫折して、人生に折り合いをつけられなくても
それでもなんとか前向きに生きようともがくわけじゃないですか。
頂点でもがく長谷川選手に対してどうこうではなく、
観ている凡人の自分に対してキツく刺さる言葉でした。
[井]
2011年01月12日 00:59
それほどの気持ちで臨んでいたのは痛いほどわかるつもりだけれど、負けたら自分を否定し続けて生きていく…というほど追い詰めなくてもいいのに、なんて考えるのはわかってないってことなんでしょうか。
judie
2011年01月15日 11:43
はじめまして。
たまたまこちらに辿りつきまして、コメントさせていただきます。
「負けたら、一生自分を受け入れない自分で生きていかなあかん。」という言葉は、
あの番組でインタビューを受けた時期の長谷川選手の、<特別な事情>から発せられたものだと私は思いました。
長谷川選手の試合を心の支えにしながら壮絶な闘病をしてこられたお母様に彼が最後に見せたのは、
モンティエル戦で打ちのめされ、敗者となった自分の姿でした。
お母様が長谷川選手に対して、生前最後に、声を振り絞るように仰ったのは、
次の試合を自分は観に行けないけれど頑張って、という内容の言葉だったそうです。
母の最後の願いに応えるため、彼はどうしても次の試合に勝って、その勝利を母に捧げたかったのです。
彼は、負けたままの自分の姿が、自分のためにも、また、母のためにも許せなかったのでしょう。
「負けたら、一生自分を受け入れない自分で生きていかなあかん。」というあの言葉は、
長谷川選手の、そんな特別な事情や心の内を表したものだったのではないでしょうか。
長谷川選手は、決して、「負けたら負け犬」と思うような後ろ向きの人ではないと思います。

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