怖さと切なさと輝きと 【酔いどれ前のひとりごと vol.141】

画像


vol.141 怖さと切なさと輝きと


 1993年7月、佐藤仁徳は朴政吾に2回TKOで敗れた。世界ランカー相手に初回はKO決着を予感させる出来映えだったが、あっという間の逆転劇に、佐藤サイドの技術の未熟や駆け引きの甘さはあったかもしれないけれど、僕はボクシングの深い淵を見た思いだった。

 1992年6月、ウンベルト・ゴンサレスに挑んだオリンピック金メダリスト金光善は善戦むなしく12回TKOに散った。どちらを応援していたわけではない。むしろ挑戦者に思い上がりを見て嫌な感じを僕は覚えた。それでも優勢に試合を進める挑戦者が勝利してしかるべきと思っていたのに、女神が微笑んだのは王者のほうだった。結果として天狗の鼻をへし折ってやったように見えたが、勝負の酷薄を感じた。

画像 1987年6月、高橋直人は今里光男を3回KOで返り討ちにして日本バンタム級王座を初防衛した。

 高橋はその前の今里光男第1戦と、翌々年のマーク堀越戦とが年間最高試合に選ばれた名立たるボクサーだが、僕にはこの今里第2戦が最高のファイトだった。

 リングが輝いていた。リズミカルで好戦的なスタイル、当てカンの良さ、攻防の間合い、それらに魅せられているうちに、僕は亡きメキシカン、サルバドル・サンチェスに高橋直人をかさねていた。

 今でも妄想がよぎる。この試合の直後に世界戦をやらせたらどうだったろうって。バンタムでの減量は限界だったようだけれど。

 名勝負やビッグファイトとはまた別に、ボクシングの魅力の一端で、思いつくまま書いた。似たようなタイトルのミリオンヒット曲があったわねえなんて誰かに言われそう。

 ま、いいさ。


▽バックナンバー
vol.140 怪物
vol.139 負け知らず
vol.138 神の左
vol.137 「石の拳」一代記!
vol.136 目の前の人――勝間和雄
vol.135 天国のボクサー
vol.134 幸運な偶然+ボクシングへの思い=?
vol.133 大晦日の横浜文化体育館・W世界戦
vol.132 長谷川穂積の言葉
vol.131 女あるじ
vol.130 オールド・ファッション・ボクシング~12
vol.129 ストレート・フェチ
vol.128 内藤vs.亀田を見て .....
vol.127 いやんなっちゃうぜ
vol.126 ハグラーvs.レナード――強者と勝者
vol.125 モハメド・アリ最高試合
vol.124 敗者の残像
vol.123 稀代のボクサー
vol.122 デュランvs.レナードと、六月の雨
vol.121 オールド・ファッション・ボクシング~11
vol.120 オールド・ファッション・ボクシング~10
vol.119 ごめんね、テリー・ノリス
vol.118 オールド・ファッション・ボクシング~9
vol.117 オールド・ファッション・ボクシング~8
vol.116 オールド・ファッション・ボクシング~7
vol.115 オールド・ファッション・ボクシング~6
vol.114 オールド・ファッション・ボクシング~5
vol.113 オールド・ファッション・ボクシング~4
vol.112 粟生隆寛、1ラウンドKOを命ず
vol.111 オールド・ファッション・ボクシング~3
vol.110 世界を制する左を
vol.109 オールド・ファッション・ボクシング~2
vol.108 オールド・ファッション・ボクシング~1
vol.107 粟生惜敗で思い出す「女神」…つづき
vol.106 粟生で思い出した「女神の機嫌」
vol.105 粟生が逃したチャンス
vol.104 がれき
vol.103 大場政夫の強さについて
vol.102 ずるずる負け
vol.101 たわごと・ざれごと・えそらごと Part 3
vol.100 日本最高試合その3
vol.99 日本最高試合その2
vol.98 日本最高試合その1
vol.97 たわごと・ざれごと・えそらごと Part 2
vol.96 たわごと・ざれごと・えそらごと
vol.95 追放
vol.94 ゴキブリ発言
vol.93 辰吉、魅惑の3番勝負
vol.92 それぞれの落日
vol.91 運の悪い男
vol.90 ロッカールーム
vol.89 重箱のスミ~2006年12月号
vol.88 重箱のスミ~2006年11月号
vol.87 アウトがセーフ
vol.86 重箱のスミ~2006年10月号
vol.85 ラウンドガールは飯島愛
vol.84 重箱のスミ~2006年9月号
vol.83 夢の始まりは…
vol.82 重箱のスミ~2006年8月号
vol.81 拳聖ふたたび
vol.80 重箱のスミ~2006年7月号
vol.79 重箱のスミ~2006年6月号
vol.78 重箱のスミ~2006年5月号
vol.77 重箱のスミ~2006年4月号
vol.76 重箱のスミ~2006年3月号
vol.75 悪いのはだれだ? おれだ…
vol.74 オサム会長はおっきいのがお好き
vol.73 重箱のスミ~2006年2月号
vol.72以前 夜明け前,カメダ・ワールド,重箱のスミ~2006年1月号,逆転の貴公子,ほんの少しの恐怖,ジャブを出せ,ガッツ石松 vs ロベルト・デュラン~もちろん架空~エキジビション,最強という名の幻想,年間最高試合について,これぞ伝説,アリ、フレージャー、そしてフォアマン,だけどファイティング原田は好きだった,なんとなく空想対決[G.フォアマン vs B.サップ],拳聖....etc.


■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。


ロベルト・デュラン "石の拳" 一代記
白夜書房
クリスチャン・ジューディージェイ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ロベルト・デュラン

ロベルト・デュラン石の拳一代記 [ クリスチャン・ジューディス ]
楽天ブックス
クリスチャン・ジューディス 杉浦大介 白夜書房発行年月:2013年03月09日 予約締切日:2013


楽天市場 by ロベルト・デュラン石の拳一代記 [ クリスチャン・ジューディス ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック