マーベラス 【酔いどれ前のひとりごと vol.145】

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vol.145 マーベラス


 ある試合をYou Tubeで見ようと探しに行ったら、マービン・ハグラーとトーマス・ハーンズの一戦が引っかかり、手をとめて見ているうちに、探している試合がなんだったか忘れてしまった。お気に入りに入れてソチ五輪の前あたりからちょこちょこ見ている。ハグラーの3回KOだが、見るのはもっぱら初回だけ。

 1985年4月15日、《今世紀最後のスーパーファイト》と喧伝されて、東京12チャンネル――もうテレビ東京になってたか――で放映された。三原正がゲストだった。話ばかりして、なかなか試合が始まらないのでKO決着だったんだなと、どっちが倒れたんだろうと、胸がざわざわした。

 初回のゴングと同時に両者接近、その瞬間ハグラーの右スイング。

 空振りで、ハグラーにはあるまじき無謀で幼稚なパンチに見えたが、打ち合いの場へ引きずりこむ周到な一手だったのか。ハーンズに距離を取らせず、ぐいぐい出るハグラーに開始20秒、ロープを背にしたハーンズの右がヒットしてハグラーが横を向く。続けてハーンズの猛烈な連打でハグラーが一歩さがる。

 この一連の、わずか10秒ほどのシーンで、実況は試合を見誤り、ハーンズ有利と伝えた。当時の僕もなにがなんだかわからなかった。1分過ぎからハーンズは足を使うようになる。ハグラーのあくなき前進に、どうしていいかわからない迷いのステップだったと思う。

 この初回を繰り返し見るうちに思った。

 ボクシングは知っているがハグラーもハーンズも知らない人に、この初回の映像のみを見せて、どちらが王者か問うたら、上背があり黄の派手なトランクスのハーンズと答える人が多いんじゃないかと。王者が無名の挑戦者の、がむしゃらなアタックに手を焼いているように見えるんじゃないかと。

 事を成さんと欲すればかくあるべしと、初回のハグラーを見ていて、怠け者は感じて、だからお気に入りに入れてちょこちょこ見ているのかもしれない。

 古い試合なのに新鮮で、やっぱりハグラーはすごいね。


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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。


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この記事へのコメント

かいちゃん
2014年04月15日 22:12
あれこそがこの100年最高のファイトだと確信しています。いまは亡きテレビ東京杉浦アナウンサー、ゲストの佐瀬稔さんの解説も最高でした。当時中学3年だった私はすでに43歳・・・・時が経っても色褪せない素晴らしいファイトです。取り上げて下さった管理人さんに感謝!
じゃぶ
2014年04月16日 06:37
あの冷静なリチャード・スティールが試合終了後
興奮気味にまくし立てていたのを思い出しました。
ハグラーのパンチでハーンズの目尻が切れたんだよ!
リチャードも最も印象に残る試合なのかも?
パウンドまん
2014年04月16日 16:22
レナード>ハグラ>ハーンズ>>ヂュランが世間の評価だが
ハグラ>レナード=ハーンズ>>ヂュランがオレの評価
以下 タイプが似てる今のボクサー(少々こじつけ)
レナード=メイウェザー、デュラン=パッキャオ、ハグラー=ブラッドリー
では ハーンズは誰に似てるかな?

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