妄想劇場「日本クルーザー級王座決定戦」 ~くたばれテンポイント #12
架空実況兼妄想劇の第12回=最終回! 無事に(?)放送も終わり、残されたゲストの面々はどこに繰り出すのやら――。
演目:日本クルーザー級王座決定戦10回戦
》》》構成:酔いどれ《《《
時:2011年の盛夏
所:TACテレビのモニター室
登場人物(全部架空・・・いうまでもなく)
さぶろう:ひねもす三郎(作家/69歳)
ますお:あらため益男(編集者/52歳)
ゆうぞう:さかしら勇造(評論家/45歳)
ゆりこ:やまざくら百合子(女優/28歳)
きんじ:かしおり金治(TACアナウンサー/36歳)
←#11 ついに最終ラウンド!←
【#12 酒と泪と男と女?】
さぶろう 野郎、ふざけやがって。お疲れのひとことも言いやしねえ。放送終わったらコロっと様子を変えやがって。だからおれはアナウンサーって人種は好かねえんだよ。みんながみんなじゃねえけんどよ、正義だの同情だの、ンなものばかり売り物にしやがって、他人の不幸を腹の底から喜んで、他人の不幸が本当に気の毒だと思ったら、たまには涙のひとつも見せりゃいいじゃねえか。いつだって背広姿で、門(かど)のゴミをてきぱきてきぱき収集車にさばくように、他人のフンドシで相撲とるだけで、なーに、てめえのことで頭ン中いっぱいだ。
ますお もういいじゃないですか、それはそれでもういいじゃないですか。
さぶろう 物わかりがいいんだね、あらちゃん。
ゆりこ 先生がわからないだけ。
さぶろう 百合ちゃんもそんなこと言うのかい。
ゆうぞう ひねもす先生、落ち着きましょう。先生のお気持ち、お腹立ち、ボクはよく分かるつもりでいます。
さぶろう ただの青二才に何がわかる。
ゆりこ なんてこと言うの、失礼よ。
ゆうぞう いえ、先生の仰おっしゃる通りですから。
ゆりこ だって…。
ゆうぞう いえ、ほんと、そうです。ボクなんか、たまたま原稿がちょっと売れただけで、それもマスコミ相手ですから、結局、迎合だらけの文章ばかりをこしらえているに過ぎないんです。小才の利く小学生が先生や親の顔色を見て書く作文、さきほどそんなふうに先生はおっしゃってましたが、小学生ばかりじゃありません。大の大人のほうがむしろ出版社や大衆読者におもねって、その腹具合を見て、消化のいい、口当たりのいい、安手のものを提供しようと努めるんです。そうしなければ原稿が売れないからです。売れないものは存在しないに等しくなってしまいますから、やむなく、どっかで媚びて、原稿を生かそうとするんです。疲れましたね、ボクも。なんてくだらないことをおれはやっているんだろうって、マスコミ相手、その向こうの、マスコミに煽動される一般大衆相手が。さすがに嫌気がさしてきてもいるんです。テレビや大マスコミは特に横柄でもありますしね。
ゆりこ さかしらさん、そんなふうに思っていたんですか。
ゆうぞう ですから、いや、ですからってのもおかしいですけれど、ひねもす先生、落ち着きましょう。ケンカするほどの相手でもないですよ。
ますお あの、取り込んでるところ、すみませんが、ここもそろそろ引き払わないと、で、あの、例の件、みなさん、よろしくお願いします。
ゆりこ 例の件て?
さぶろう あらちゃんとこの、あの雑誌か。
ますお そうですよ。特別増刊号を出して新装パワーアップして、なんて、テレビの始めで言いましたが、実はヤバいんですよ。売れるか売れないか、どうしてもそれなりの数字を出さなくてはならないんです。今どきボクシングは流行らなくなってきちゃって、でもどうしても売らなければならないんです。
さぶろう 電気つけっぱなしで茶の間で眠りこけていた子供が、来年、成人式なんだってさ。下の子も大学進学だってさ。ゼニがいるんだ。
ますお 皆さんの協力が必要なんです。
さぶろう 崖っぷちの編集長にどうか皆様の御慈悲を。
ゆりこ あたしでよかったらなんでもお手伝いしちゃいます。グラビアで登場しちゃおうかしら。
さぶろう 売れっ子女優さん、ギャラは安く頼むぜ。
ゆうぞう ボクも何か書いてもいいですか。
さぶろう 飛ぶ鳥落とすいきおいの先生も、すまんが、破格の安いギャラでな。
ゆうぞう 全然構わないですよ。
さぶろう おれなんか、ほとんどボランティアだ。もっとも、おれじゃあ、もう経済効果は見込めないからな。
ますお よろしくお願いします。
さぶろう というわけで、一杯いくべえよ。
ゆりこ 先生、あたし、ごめんなさい。あした朝早くロケ入っちゃてるの。
さぶろう なこと、わかってるよ。売れてる人があって、売れない人があるんだ。稼げる時にバンバン稼がなくちゃだめさ。
ゆりこ ごめんなさい。ほんとは一緒に行きたい。
さぶろう なこと、言ってくれるなよ。こんなキラキラした女優さんを連れていたら、とんでもないことんなっちまうよ。
ますお わたしは大丈夫ですよ。取りあえずいつものところでいいですよね。
さぶろう ンなこと聞かずともわかってるよ。むさくるしいが、野郎同士、きょうはハシゴだな。
ますお いつだってそうじゃないですか。
さぶろう あ、百合ちゃん。
ゆりこ はい。
さぶろう 酒をあおったら言ってみようかって思ってたんだけど。
ゆりこ なんですか?
さぶろう うん…
ゆりこ なんですか?
さぶろう いや、なに、こんど逢ったらさ……
ゆりこ こんど逢ったら…?
さぶろう こんど逢ったら、あのさ、恋人になってくんねえか。
ゆりこ ・・・・!?
さぶろう いやさ、恋人になって、そのあとで思いっきり振っても構わねえから、とにかく、こんど逢ったら、恋人になってくんねえか。
ますお なにをばかなことを言ってるんですか、先生。ご自分の年や立場、やまざくらさんの人品や状況、考えるまでもないことじゃないですか!
さぶろう おれはいい女を見ると、恋人になってくれって言いたくなるんだよ。
ますお そうじゃない女性には、メル友募集って言うんですか。
さぶろう いやにからむね、あらちゃん。案外、根に持つタイプだな。
ますお そうすか。
さぶろう 女優とか、芸人もそうだけどさ、自分を売り込むためだったらなんでもする、どんな汚いことでも平気でする、そういうのをおれはおれなりにさんざん見てきたからさ、役者や歌手のちょっと良さそうなのでも、すぐに底が知れて、たいしたこたぁねえってのが多いけど、百合ちゃんは珍しく毛色がちがうようでさ。
ゆりこ 百合子、うれしいですよ、先生にそんなふうに言われて。
ますお だからって、恋人はないでしょ。こんど逢ったら恋人、なんですかそれ。年がいもない。先がないっていうのはわかりますけど、非常識もはなはだしいですよ。大丈夫ですか。
さぶろう ちょっ、ちょっ、ちょっ。言うにことかいて、先がないってのは、あらちゃん、言い過ぎだんべ!
ますお そうすか。わたしは、先生に対してはできるだけ礼をつくして、ほんとうのことを言わなくちゃと思ってるもんですから、つい。
さぶろう 突っかかるねぇ。やっぱり根に持つタイプだな。
ますお そうすか。
さぶろう 先がないったってさ、先のことなんかわかるめぇ。年寄だから先に死ぬ、早く死ぬ、先に死ぬ、若いからまだ死なないって保障はねえぞ。
ますお ですけれど、どんな常識からいったって先ですよ。こう言っちゃ悪いですけど、先生、さっきの便所の件もそうですけど、そろそろボケが始まってるんじゃないですか。
さぶろう なんだと!?
ゆうぞう あいや、ひねもす先生もあらため編集長も、あいや、落ち着きましょう、落ち着きましょう。またボクが口幅ったいことを言いやがってと、お叱りを頂戴するかもしれませんけれど、ひねもす先生がおっしゃった、こんど逢ったらの、こんど、っていうのは、あしたとか一週間後とか来年とか、そんなことじゃなくて、あの、間違ってたらごめんなさいですけど、生まれかわったらって、そういうことじゃないですか? 生まれかわって、また逢ったら、そのときは恋人になってくれって、そういうことじゃないですか。
ゆりこ ・・・・
ゆうぞう 違い…ましたか。
さぶろう なんだ、だてに売れっ子やってるわけじゃぁねえんだな。
ゆうぞう ああ、よかった。なんか、ヒヤヒヤしちゃいました。
さぶろう わかったかい、編集長さん。言葉の呼吸だよ。常識は常識でいいけんどよ。雑誌作りに活かしてくれぃ。
ゆりこ 先生、それであたしはどうすればいいの。
さぶろう どうすればって、だから返事を待ってるとこだよ。
ゆりこ 手を差しだせばいいのね。あとは先生のお手並拝見ね。
さぶろう うん。ま、そんなとこかな。
ゆりこ やったぁ。来世の恋を、百合子、早くも一つゲットしちゃった。
さぶろう 同じく。
ますお やれやれ…。
さぶろう よーし、一杯行くべい、崖っぷち編集長さん。売れっ子の先生はどうする、忙しいだろ、無理には誘わねえよ。
ゆうぞう いえ、こんなことになるかもしれないと期待して今日は来たんですから、ただの青二才、喜んでお供します。
≪終≫
》》》構成:酔いどれ《《《
時:2011年の盛夏
所:TACテレビのモニター室
登場人物(全部架空・・・いうまでもなく)
さぶろう:ひねもす三郎(作家/69歳)
ますお:あらため益男(編集者/52歳)
ゆうぞう:さかしら勇造(評論家/45歳)
ゆりこ:やまざくら百合子(女優/28歳)
きんじ:かしおり金治(TACアナウンサー/36歳)
←#11 ついに最終ラウンド!←
【#12 酒と泪と男と女?】
さぶろう 野郎、ふざけやがって。お疲れのひとことも言いやしねえ。放送終わったらコロっと様子を変えやがって。だからおれはアナウンサーって人種は好かねえんだよ。みんながみんなじゃねえけんどよ、正義だの同情だの、ンなものばかり売り物にしやがって、他人の不幸を腹の底から喜んで、他人の不幸が本当に気の毒だと思ったら、たまには涙のひとつも見せりゃいいじゃねえか。いつだって背広姿で、門(かど)のゴミをてきぱきてきぱき収集車にさばくように、他人のフンドシで相撲とるだけで、なーに、てめえのことで頭ン中いっぱいだ。
ますお もういいじゃないですか、それはそれでもういいじゃないですか。
さぶろう 物わかりがいいんだね、あらちゃん。
ゆりこ 先生がわからないだけ。
さぶろう 百合ちゃんもそんなこと言うのかい。
ゆうぞう ひねもす先生、落ち着きましょう。先生のお気持ち、お腹立ち、ボクはよく分かるつもりでいます。
さぶろう ただの青二才に何がわかる。
ゆりこ なんてこと言うの、失礼よ。
ゆうぞう いえ、先生の仰おっしゃる通りですから。
ゆりこ だって…。
ゆうぞう いえ、ほんと、そうです。ボクなんか、たまたま原稿がちょっと売れただけで、それもマスコミ相手ですから、結局、迎合だらけの文章ばかりをこしらえているに過ぎないんです。小才の利く小学生が先生や親の顔色を見て書く作文、さきほどそんなふうに先生はおっしゃってましたが、小学生ばかりじゃありません。大の大人のほうがむしろ出版社や大衆読者におもねって、その腹具合を見て、消化のいい、口当たりのいい、安手のものを提供しようと努めるんです。そうしなければ原稿が売れないからです。売れないものは存在しないに等しくなってしまいますから、やむなく、どっかで媚びて、原稿を生かそうとするんです。疲れましたね、ボクも。なんてくだらないことをおれはやっているんだろうって、マスコミ相手、その向こうの、マスコミに煽動される一般大衆相手が。さすがに嫌気がさしてきてもいるんです。テレビや大マスコミは特に横柄でもありますしね。
ゆりこ さかしらさん、そんなふうに思っていたんですか。
ゆうぞう ですから、いや、ですからってのもおかしいですけれど、ひねもす先生、落ち着きましょう。ケンカするほどの相手でもないですよ。
ますお あの、取り込んでるところ、すみませんが、ここもそろそろ引き払わないと、で、あの、例の件、みなさん、よろしくお願いします。
ゆりこ 例の件て?
さぶろう あらちゃんとこの、あの雑誌か。
ますお そうですよ。特別増刊号を出して新装パワーアップして、なんて、テレビの始めで言いましたが、実はヤバいんですよ。売れるか売れないか、どうしてもそれなりの数字を出さなくてはならないんです。今どきボクシングは流行らなくなってきちゃって、でもどうしても売らなければならないんです。
さぶろう 電気つけっぱなしで茶の間で眠りこけていた子供が、来年、成人式なんだってさ。下の子も大学進学だってさ。ゼニがいるんだ。
ますお 皆さんの協力が必要なんです。
さぶろう 崖っぷちの編集長にどうか皆様の御慈悲を。
ゆりこ あたしでよかったらなんでもお手伝いしちゃいます。グラビアで登場しちゃおうかしら。
さぶろう 売れっ子女優さん、ギャラは安く頼むぜ。
ゆうぞう ボクも何か書いてもいいですか。
さぶろう 飛ぶ鳥落とすいきおいの先生も、すまんが、破格の安いギャラでな。
ゆうぞう 全然構わないですよ。
さぶろう おれなんか、ほとんどボランティアだ。もっとも、おれじゃあ、もう経済効果は見込めないからな。
ますお よろしくお願いします。
さぶろう というわけで、一杯いくべえよ。
ゆりこ 先生、あたし、ごめんなさい。あした朝早くロケ入っちゃてるの。
さぶろう なこと、わかってるよ。売れてる人があって、売れない人があるんだ。稼げる時にバンバン稼がなくちゃだめさ。
ゆりこ ごめんなさい。ほんとは一緒に行きたい。
さぶろう なこと、言ってくれるなよ。こんなキラキラした女優さんを連れていたら、とんでもないことんなっちまうよ。
ますお わたしは大丈夫ですよ。取りあえずいつものところでいいですよね。
さぶろう ンなこと聞かずともわかってるよ。むさくるしいが、野郎同士、きょうはハシゴだな。
ますお いつだってそうじゃないですか。
さぶろう あ、百合ちゃん。
ゆりこ はい。
さぶろう 酒をあおったら言ってみようかって思ってたんだけど。
ゆりこ なんですか?
さぶろう うん…
ゆりこ なんですか?
さぶろう いや、なに、こんど逢ったらさ……
ゆりこ こんど逢ったら…?
さぶろう こんど逢ったら、あのさ、恋人になってくんねえか。
ゆりこ ・・・・!?
さぶろう いやさ、恋人になって、そのあとで思いっきり振っても構わねえから、とにかく、こんど逢ったら、恋人になってくんねえか。
ますお なにをばかなことを言ってるんですか、先生。ご自分の年や立場、やまざくらさんの人品や状況、考えるまでもないことじゃないですか!
さぶろう おれはいい女を見ると、恋人になってくれって言いたくなるんだよ。
ますお そうじゃない女性には、メル友募集って言うんですか。
さぶろう いやにからむね、あらちゃん。案外、根に持つタイプだな。
ますお そうすか。
さぶろう 女優とか、芸人もそうだけどさ、自分を売り込むためだったらなんでもする、どんな汚いことでも平気でする、そういうのをおれはおれなりにさんざん見てきたからさ、役者や歌手のちょっと良さそうなのでも、すぐに底が知れて、たいしたこたぁねえってのが多いけど、百合ちゃんは珍しく毛色がちがうようでさ。
ゆりこ 百合子、うれしいですよ、先生にそんなふうに言われて。
ますお だからって、恋人はないでしょ。こんど逢ったら恋人、なんですかそれ。年がいもない。先がないっていうのはわかりますけど、非常識もはなはだしいですよ。大丈夫ですか。
さぶろう ちょっ、ちょっ、ちょっ。言うにことかいて、先がないってのは、あらちゃん、言い過ぎだんべ!
ますお そうすか。わたしは、先生に対してはできるだけ礼をつくして、ほんとうのことを言わなくちゃと思ってるもんですから、つい。
さぶろう 突っかかるねぇ。やっぱり根に持つタイプだな。
ますお そうすか。
さぶろう 先がないったってさ、先のことなんかわかるめぇ。年寄だから先に死ぬ、早く死ぬ、先に死ぬ、若いからまだ死なないって保障はねえぞ。
ますお ですけれど、どんな常識からいったって先ですよ。こう言っちゃ悪いですけど、先生、さっきの便所の件もそうですけど、そろそろボケが始まってるんじゃないですか。
さぶろう なんだと!?
ゆうぞう あいや、ひねもす先生もあらため編集長も、あいや、落ち着きましょう、落ち着きましょう。またボクが口幅ったいことを言いやがってと、お叱りを頂戴するかもしれませんけれど、ひねもす先生がおっしゃった、こんど逢ったらの、こんど、っていうのは、あしたとか一週間後とか来年とか、そんなことじゃなくて、あの、間違ってたらごめんなさいですけど、生まれかわったらって、そういうことじゃないですか? 生まれかわって、また逢ったら、そのときは恋人になってくれって、そういうことじゃないですか。
ゆりこ ・・・・
ゆうぞう 違い…ましたか。
さぶろう なんだ、だてに売れっ子やってるわけじゃぁねえんだな。
ゆうぞう ああ、よかった。なんか、ヒヤヒヤしちゃいました。
さぶろう わかったかい、編集長さん。言葉の呼吸だよ。常識は常識でいいけんどよ。雑誌作りに活かしてくれぃ。
ゆりこ 先生、それであたしはどうすればいいの。
さぶろう どうすればって、だから返事を待ってるとこだよ。
ゆりこ 手を差しだせばいいのね。あとは先生のお手並拝見ね。
さぶろう うん。ま、そんなとこかな。
ゆりこ やったぁ。来世の恋を、百合子、早くも一つゲットしちゃった。
さぶろう 同じく。
ますお やれやれ…。
さぶろう よーし、一杯行くべい、崖っぷち編集長さん。売れっ子の先生はどうする、忙しいだろ、無理には誘わねえよ。
ゆうぞう いえ、こんなことになるかもしれないと期待して今日は来たんですから、ただの青二才、喜んでお供します。
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