連載:鈴木成章の“なんとなくマニアック” vol.16 [池原繁尊インタビュー]その2

《文科系ボクシングマニア・ライフワークの記》

vol.16 “特濃ボク汁”インタビュー
[第2回:池原繁尊]
その2
横浜光/日本ライトフライ級7位)



※その1はこちら


 10戦して9勝1分、勝ち星のうち6つがKO。池原はライトフライ級としては、かなりのパンチャーだ。破壊力満点の右クロスで開始20秒で金井弘樹(北沢)を倒した、2004年7月の新人王予選。惜しくもKOは逃したものの、重いボディーブローで相手の戦力を削ぎ落としていった昨年12月の橘悟朗(エディタウンゼント)戦…。

「パンチがあるっていう実感や自覚はないんです。現にこの前の試合も倒していませんから。それにその、『重いパンチでダメージを蓄積させる』っていうのは確かに、そんなイメージがあるのかも知れないんですけど、それじゃダメなんですよ。いまはそれで通用しても、キャリアとともにそれでは倒せなくなってくるわけですから。それは先生(金昌龍トレーナー)とも話し合っています。いまはキレを重視して、腰の回転を意識して打つように心がけています。

 右クロスはデビューした頃、よく使いました。相手のジャブに被せるんです。金さんから教わったんですけど、はじめにそれをやると相手も怖くてジャブが打てなくなる。だから右クロスを打つっていうのは、ある意味ディフェンスにも通じるんですよね。ただ、だんだん相手も研究してくるから。それで一時期のようには多用しませんけど。そのときどきでテーマも変わっていくから、いつまでも同じ戦術に依存してしまわないようにしています」


画像
2004年新人王戦“同期出場”のC級ボクサー(右)とも話が弾んだ…!?


 池原は対戦相手のビデオを観ることは、それほど多くないという。逆に、自分の試合のビデオは「よく見ますよー」なのだ。

「あら探しっていうか…。自分の弱点や欠点を探すために観ています。ひとつずつ見つけて、修正してレベルアップさせていくことが大事だと思うので。いやあ、ホンッとイライラしますね。『遅い!』とか思っちゃいますから(笑)。スピードっていう意味でもそうだし、周りからもよく言われるんですけど、スロースターターっていう意味でもそうですね。ウォーミングアップが足りないのかどうかは、わからないですけど。汗ビッショリになるまでやって体を冷やしてしまったら、それはそれで意味がないですもんね」

 海外のトップボクサーのビデオもよく観るそうだ。感心したのは“完璧男”リカルド・ロペス。

「ぼくとはスタイルが違うから、真似しようと思って見たわけじゃないんですけど…あのディフェンスへの意識の高さは尊敬します。ラタナポンとの(IBFライトフライ級防衛戦の)試合を観たんですけど、離れ際にしっかりガードを上げるところは参考にしています。

 いまのライトフライ級のチャンピオンの試合は、WBCのブライアン・ビロリア(アメリカ)のを観ました。強いんだけど、試合が早く終わってしまったので、参考になりませんよね(笑)。あ、見るだけだったらアルツロ・ガッティ(アメリカ)も好きですよ」


画像 2003年5月に発刊された『あしたのボクシング』を覚えているだろうか。そう、“ボディブロー”なんて第一特集を組んだ、あの号だ。話を聞いていて、この池原こそが特集に相応しい選手だろうと思ってしまった。もっとも彼は当時、デビューすら果たしていなかったのだが。

「左ボディブローは、実はプロになった頃から得意なパンチなんですよ。よく、ボディを打つのは顔面がガラ空きになるから(カウンターを取られる恐れがあって)怖いって言いますよね。ぼくはそういう意識はないんです。ボディはインサイドに低く入り込んで打つもので、無防備な状態で打つパンチではありませんから、顔がガラ空きになることはないと思ってるんです。これは金さんが、体に染みこませてくれたのかも知れません。ぼくのスタイルをはじめから見極めていたんでしょうね」

 クレバーに、自他のボクシングを表現できる男はどんどん続けてくれる。

「ボディブローより、むしろぼくは、ワンツーの方が怖いです。みんなが必ず打つものだから、タイミングもみんながわかっている。だからカウンターを合わせられやすいような気がします。不用意にワンツーを打つ方が、怖いと思います。

 ぼくの場合ボディは、フックよりもアッパーで打つことが多いです。感覚としては『刺すように打つ』っていうのかな。大橋秀行さん(元WBA&WBCミニマム級チャンピオン=現大橋ジム会長)が崔漸換(韓国)をKOした左ボディを見て、すごいなって思ったことがあるんです。ジムでバッグを打って試したことがあるんですけど、自分のスタイルとは合わなかったみたいですね」


 ボディブローといえば辰吉丈一郎。彼の名前を出すと…

「辰吉さんのボディブローは別格ですね。ミドルレンジから打てるのは、あの手の長さがあるからですよね。辰吉さんて、結構手打ち気味ですよね。あれこそ顔面がガラ空きになってしまうから、普通は怖くて打てないでしょう」

 近年話題のあの選手にも及んでいった。

「亀田(興毅)くんがノエル・アランブレット(ベネズエラ)のボディに打ち込んだ左ストレートは、よかったですね。あれは見事だと思いました。ぼくの場合はボディーにストレートを持っていくことは、あまりないんです。下に相手の意識を持っていかせるために打つことはあるんですけどね。ストレートだと、どうしても打ち終わりのバランスが取りづらいんです。

 最近、巧いと思ったのは、八重樫(東=大橋/OPBFミニマム級チャンピオン)の左ボディですね。何がかっていうと、脚なんです。彼、フットワークがいいんですよ。右に回り込んで、そこからアッパーをボディに持ってくるから鳩尾(みぞおち)に入るんです。あれには唸らされました」


 調子に乗ってインタビュアーたちはランダムに訊ねていく…

「ボディ打ちのタイミングですか? よく『相手が息を吐いた瞬間に打つと効果的だ(その逆の説も含め)』とかって聞きますけど、なかなかできるもんじゃないですよね。タイミングをズラせば効くっていうのはわかってはいますけど、いまの自分にはちょっと…相当難しいことだと思います」

・・・もう1回つづく


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■鈴木成章(すずき・せいしょう)
1971(昭和46)年生まれ、愛知県出身。基本は都内某社に勤めるサラリーマン。ボクシング観戦と外盤屋でのレコード漁りが、本業に著しく支障をきたしている30代・独身。使うあてもないのに、ボクシンググローブを買ってしまう、自称「文科系マニア」。




ボクサー亀田興毅の世界

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この記事へのコメント

リカルド・マルチネス
2006年04月09日 15:32
池原選手の次の試合は決まってないんすか?
Inoue
2006年04月10日 01:24
5月23日みたいです。
リカルド
2006年04月13日 16:27
ありがとうございました!
日本人じゃないので多分あんまり見たくなりません。

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