オールド・ファッション・ボクシング~3 【酔いどれ前のひとりごと vol.111】

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vol.111 オールド・ファッション・ボクシング
~タイソンからパッキャオまで~3


 1991年、世界ヘビー級チャンピオンはイベンダー・ホリフィールドだったが、時代はまだマイク・タイソンだった。

画像 タイソンはドノバン・ラドックを連破し、ホリフィールドはジョージ・フォアマンを判定で破り、さあ、いよいよ世界一決定戦――というところで、タイソンが収監されてしまった。

 のちに実現はするが、やはりここでやってほしかった。両者の力が最も接近していた時期だったように思う。

 エキサイトマッチ1991年放映分でほかに印象に残った試合は、「アズマー・ネルソンvs.ジェフ・フェネック」に「ムアンチャイ・キティカセムvs.張正九」、「トニー・ロペスvs.ホルヘ・パエス」等がある。

 中でも「ロペスvs.パエス」は、1991年の総集編には取り上げられなかったが、両者の相性がよかったのか、12ラウンズ間断のない打ち合いで、僕の好きな試合になった。ともに世界王者の肩書きがあるけれど、ともにスーパースターではない。その2人がいい試合を見せてくれた。

 以前に安部譲二さんへインタビューに伺ったとき、「僕は二流の作家だ」と言われた。元世界王者の西城正三さんは、「僕のボクシングはB級だった」と言われた。

 一流二流三流、A級B級C級と、便宜上分けるだけならいいが、一流って何、二流って何、と、いろいろな分野での評価の区分けに接するたびに首をかしげることがある。

 ロペスvs.パエスは、けれんみのない愚直なファイトで、やっている当人たちは二流ボクサーかもしれないが、試合はA級だったと、観客のスタンディング・オベーションに思いをかさねた。


 小咄。

 或る夜、ホニャララという彗星が現れて、わずか9戦目にして、前評判の高い世界チャンピオンを完膚なきまでに叩きのめしました。ジュニアフライ級という軽いクラスでしたが、迎える相手をばったばったと倒しまくって拍手喝采。

 さあ、これに続けと、ゼニにモノ言わせて世界王者促成量産計画が始まりました。

 或る夜、ホニャララという折り紙つきのボクサーが現れて、派手なパフォーマンスで賛否両論、8戦目にして世界チャンピオンになりました。

 眼をわずらいはしたものの、勝負に負けたわけじゃない。暫定王者の語を定着させました。

 或る夜、ホニャララというアンチヒーローが現れて、劣勢に見えた試合が勝ちになり世界王者になりました。不可解な判定は古今東西いくらでもありましたが、アンチヒーローだけに疑惑判定に非難ごうごう。

 専門家の意見も分かれ、テンポイントマストシステムという、筋が通っているような、屁理屈がまかり通るような、素人を煙に巻く採点基準が声高に言われるようになり、一部では公開採点も始まりました、とさ。



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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。

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