オールド・ファッション・ボクシング~4 【酔いどれ前のひとりごと vol.113】

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vol.113 オールド・ファッション・ボクシング
~タイソンからパッキャオまで~4


 1991年12月、アジアの至宝カオサイ・ギャラクシーアルマンド・カストロを破り、19度目の防衛を果たして引退した。

 1992年は3月にアズマー・ネルソンvs.ジェフ・フェネック、8月にジェームス・トニーvs.マイク・マッカラムそれぞれの再戦があり、ともに王者が防衛した。勝負のアヤはオレなんぞにゃわからない。

 アイラン・バークレートーマス・ハーンズを返り討ちにしたのもこの年の3月だった。

 6月、ウンベルト・ゴンサレスvs.金光善の印象深い試合があった。勝ちが見えていたエリートボクサーがアゴを打たれ死に体になって落ちていくさまは、天狗の鼻がへし折られたと言えば言えるが、試合の流れだけを見たとき、切なかったねぇ。

 9月にはフリオ・セサール・チャベスvs.ヘクター・カマチョの「大一番」があった。大一番といってもこの試合を大一番に仕立てたのはゼニカネを追う連中の仕業にすぎない。

 このときのカマチョがこのときのチャベス相手にまっとうな勝負ができるはずはなく、ハナからそのつもりもなく、戦うふりして倒されなければ成功――と踏んだゼニカネ連中の思わく通りにコトは運んだ。コトが運べばまた次の「大一番」がやってくる。

 カマチョの初期のファイトは光速感にあふれて素晴らしかったが、エドウィン・ロサリオ戦を境に姿が変わった。勝負でなくパフォーマンスで生き残る、ボクサーでなくエンターテイナーとしてゼニを稼ぐ。だからカマチョはリング外で面白く、ゴングが鳴るや退屈になった。このころのカマチョのスピードなんてたかの知れたものだった。

 ラリー・ホームズを連破してからマイク・タイソンと戦うまでのマイケル・スピンクスが、民衆のチャンピオンと名乗って、タイソン戦に向けてファイトマネーのつり上げをはかったことがだぶってきたものだった。

 そうして弱きをくじき強きに逃げるカマチョの姿勢は不快だったが、今となってはどうでもいい。だって、弱きをくじき強きに逃げるなんて、オレとおんなじだし、そこいらじゅうにあるからさ。ともかく、なんでもありの時代がとうにやってきていた。

 5点法が10点法に変わって、より精確な判別ができるようになったように見えるが、わからないことがある。10点のうちの1から5までは何なのかということ。

 学校の通信簿は成績に応じて1から10までの点数がつくのに、ボクシングはどんなに差がついてもせいぜい10-6。何度もダウンして、かさねて減点をとられても10-5だろうが、ここまで落差のある点数は見たことがない。間違っても10-4とか10-3なんてなさそうで、それなら5点法でやったっていいんじゃないの。

 今の10点法の感覚で、5点法でやったらいけないのかしらん。

 10-9は5-4、10-8は5-3。10-5なら5-0になる。現行の10点法から5を引けば済む。総計するときも数が小さいぶん手間取らず間違いも少ないと思う。

 まさか5点法よりも10点法のほうが、凡戦や完敗を接戦や惜敗に見せられそう、なんていう魂胆がひそんでいるわけじゃないでしょ。


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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。

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