オールド・ファッション・ボクシング~9 【酔いどれ前のひとりごと vol.118】

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vol.118 オールド・ファッション・ボクシング
~タイソンからパッキャオまで~9


 1994年4月、マイケル・モーラーがイベンダー・ホリフィールドを判定にくだしてWBA・IBF王座についた。

 9月にはレノックス・ルイスがオリバー・マッコールに右一発で倒されてWBC王座から落ちた。

 そして11月、ジョージ・フォアマンがこれも右一発でマイケル・モーラーを倒して奇跡の返り咲きをした。その勝利はボクシング界にとどまらず広く世の共感を呼んだ。

 当時、フォアマンに続いてラリー・ホームズもカムバックしていたが、その理由はマネーやスポットライトのほかに、僕は世界タイトルマッチが12回戦になっていたことだと思っている。

 15回戦をこなしたボクサーなら12回戦はだいぶラクに感じられるのではないか。

 加えてアメリカ中心のボクシングが倒すよりもポイントを取るほうに重きをおきつつあり、安全管理も一応は徹底される向きになってきて、どういったらいいのかなあ、今風に言うと、ボクシングそのものが安心安全なものになりつつあって・・・・それらは今も続いているけれど、グローブを置いたボクサーでもその気になればまだまだできるし手ひどいことにもなるまいと思いこませる要因が、1980年代後半以降のボクシングに増えた。

 と、これはもともと地力のある選手のカムバックに限って僕が考えたこと。こういう話になるとマービン・ハグラーとシュガー・レイ・レナードの試合に行きついてしまうが、それはまたにして、なによりフォアマンである。

 1970年代の強面(こわもて)で無愛想で不人気の面影はまるでなかった。円くなるとはこういうことかと、わかったようなわからぬようなことがその姿を見るたびによぎったものだった。

 45歳にして20年ぶりの王座復帰は見事だけれど、1974年のキンシャサや1977年のサン・ファンでの、四面楚歌の、たぶん、リングに立つ、悪者としてのフォアマンのほうに僕は目がいってしまう。

 あのときの歓声の陰に隠れた、暗くよどんだ悪意みたいなものに、僕はまだ興味がある。それをどっかに書きとめておきたいが、面倒臭いから既存のもので済ませてしまうかもなあ。

 話は前後するが、エキサイトマッチはこの年1994年4月にモハメド・アリのドキュメント THE WHOLE STORY を6日連続で放送した。こういうものが作られ、語りつがれていくボクサーは、ほかはマイク・タイソンくらいだろうな。

◇   ◆   ◇   ◆   ◇

 2009年5月3日はマニー・パッキャオの日だった。

 きれいな包装紙に包まれた大きな箱を開けたら、同じような包みの箱が入っていて、その包みをといたらまた似たような箱。また開けたらまた箱。また箱。箱、箱。いいかげん止めようとしたけど、がまんしてたら、最後の小箱に大きな宝石が光っていた。僕にはそんな試合だった。

 リッキー・ハットン、何もできなかった。だけどあなたも宝石だった。


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■酔田振男(よった・ふりお)
1953年生れ、東京都出身。街頭テレビで藤猛vsニコリノ・ローチェを見てボクシングに惹かれ、観戦通いを始める。今はもっぱらテレビ観戦。ここ数年は週2回のキャバクラ通いに余念がなかったが、年のせいか近頃控えめ。(有)トランス企画社長。独身。

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